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第七話 虹色の雫 5
ピチャ………。洞窟の天井から伸びる鍾乳石 の先端から滴り落ちる水滴が、地面のあちらこちらに水たまりを作っている。今の所は分岐する道を確認していない。ただ大きなこの一本道だけだが先の方まで続き、その道は決して真っ直ぐではなく、時より育ち過ぎた鍾乳石や歪んだ形の壁や岩が道を狭めている。
ダニエル
「足、気を付けろよ。」
後ろを歩くルシファーを振り返り「大丈夫か?」と声を掛けたその時……ゴオオオ……!けたたましい轟音と共に地面が激しく揺れる。二人はすぐさまその身を隠し、壁側に体を退けた。
ドドドドド……!何かがこちらに向かって突進してくる。ダニエルとルシファーは互いに息を殺し、それが通過するのをただじっと待ち続けた。巨大な影が見える……岩のようなものが転がっているのか?……いや、無数の足が絶え間なく上に上がっては下に降りていくのが見える。そして巨大な物体はようやく、陰からその姿を現した。
ダニエル、ルシファー
「…………!!」
「………匂いがする………」
濁った低い声でそう囁いた化け物。岩のように重みのある体はその全身が黒光りし、エメラルドグリーンの綺麗な深緑色をしている。光が当たる箇所は虹色に光り、顔の先端にはそれはそれは立派な大きな角が長く真っ直ぐ一本、上向きに反り立っている。今まで生きてきた中で見た事の無いほど巨大な虫だ。
「………出て来い。」
この怪物にはバレている。やむを得まい、事情を話してみることにしたダニエルはルシファーに反対側に回るよう目で合図をし、二人は怪物を囲んだ形でその姿を見せた。
ダニエル
「お前は何者だ?」
「礼儀がなっておらんな。他人 の家に無断で侵入しておきながら何様のつもりだ。」
ダニエル
「……まぁ自分ら死神なんで、基本的には不法侵入なんすよ。」
「ふざけた事を言いよって、まぁいい……早く出て行け。」
呆れたようにそう言ってまた歩き始めた怪物。どうやらそこまで警戒するべき相手でもなさそうだ。一先ず安心した二人は洞窟の奥へと進んで行くその虫について行くことにした。
「………出口を間違えているぞ。」
ダニエル
「お宅……虫の王様か何かなの?象みたいにでっかいね。」
「………何も知らずにここへ来たのか?」
ダニエル
「………?」
意味ありげなそんな言葉に目を合わせて首を傾げる死神二人。辺りを見回すが、どう見てもただの洞窟だ。この場所がそれ以上の何だというのか?洞窟内の空間は奥に進むにつれ段々と開けてきた。隣でしきりに鼻を利かせるルシファーが「沢山、居ル……」と呟いた。ルシファーに気を取られよそ見をしていたダニエルが、再び正面を向くと……。
真っ暗闇を鮮やかな色とりどりの蛍光色で彩る虫が、まるで宇宙に光り輝く無数の星のように美しく互いに輝き合っている。こんなに美しい光を目にしたのは……アレンがその命をウィリアムに捧げたあの瞬間以来だ。
「ここは幻影の洞窟………ユーリカ。ここに居 る生き物は皆、外の世界では稀にしか目にすることのできぬ幻の生き物達よ……我も含め、な。」
そのような貴重なものを、何故これ程までに安易に自分ら死神に見せてくれたのか?どう考えても怪しい……罠である可能性は十分に考えられる。ダニエルは一歩後ろに下がり、ルシファーに目で合図をし、臨戦態勢を整える。そして手の平から鎌を引き抜こうとしたその時………。
「ウィリアムはどうしている?」
ダニエル
「………!!」
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