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 少し温めのお湯が私の身体からにじみ出ていた汗を洗い流していく。芳香剤と口腔消毒液のにおいが充満するシャワー室は、部屋とは対照的に眩しいほどに光が満ち溢れ、それがピンク色の壁面についた水滴を照らしていた。  細い骨ばった手が背後から伸び、シャワーを横へと向ける。その手が引っ込むと、私の背中にボディーソープが塗られていく。軽く何度か手でこすられたが、それで終わりだった。 「こっち、向いて」  そう言われて、ルカの方を向く。ルカは、凹凸のほとんどない胸までを、巻いたバスタオルで隠していた。  壁際にあったボディーソープの容器をワンプッシュ。手のひらについたソープを、私の胸に塗る。撫でるような感触に、頭の芯で電気が走るような刺激を感じた。  ルカの手が、腕に比べてあまり筋肉のついていない胸、申し訳程度に割れているお腹、そしてごわついた毛で覆われている下腹部へと降りる。手についた泡を垂れ下がる私の陰嚢に擦り付け、もう一度ボディーソープを手に取ると、今度はそれを私のまだ柔らかい陰茎に塗り付けた。  ルカは何も言わない。私のものを見つめ、そして左手で陰茎の先端を軽く握った。包皮が伸び縮みしないように押さえ、右の手のひらを陰茎の根元から中ほどまで往復させる。何度も、何度も。刺激されたものが徐々に硬くなると、その速度を少し速めた。  延々と繰り返される往復運動。陰茎が張り詰めるように硬くなったところで、漸く気が済んだのだろうか、再びボディーソープを手に取り、今度は先端の首の部分を親指と人差し指で丹念に擦り始めた。それが済むと先端の裏側の筋の部分の溝をなぞるように親指を動かし始める。それがまたしばらく続いた。  その行為がまるで神によって与えられた自らの使命であるかのように、ルカの視線はただその無言の作業に注がれている。目の前にあるものが背負う原罪を、そのものごと消し去ろうとしているようだった。そこに一切の疑問も疑念も無い。ルカは、客がお金で買った時間を、必要を通り越して無意味にすらなっている行為に費やしている。しかし、彼の表情からは、そうしようという悪意も、それに対するほくそ笑みや後ろめたさも、一切感じることは無い。彼は、ただ使命感のみで、私のものを洗っているように見えた。  私のものへと与えられている刺激が痛みに変わったところで、漸くルカの手が私のものから離れる。壁においてある口腔消毒液を取り、備え付けのコップに入れると、シャワーのお湯を半分ほど入れ、私に差し出した。 「うがいして」  それを受け取り、口に含む。するとルカは、口腔消毒液をたっぷりと自分の手に取り、私の陰毛と陰嚢部分に塗り付ける。更に追加で一度目と同じ量を手に取ると、陰茎とその先端へと塗り付けた。  私のものが、赤茶色の液体で染め上げられる。それがまるで、ルカの浄化により私の体内から染み出してきた、穢れに塗れた血のように見えた。

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