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8-6
飽きるほどのキスの後、ボクはネグリジェを、マタイはシャツとズボンを脱ぎ捨てる。ボクの体をじっと見つめるマタイの視線が苦しくて、右腕で胸を隠した。
「脱がせて」
ボクがそうつぶやくと、マタイはボクのパンティに手を伸ばした。それは下腹部を覆い隠すはずのもの。でも、小さいながらも張り詰めて硬くなったボクのものが、隠しきれない罪のようにパンティの上から顔をのぞかせている。先端を包んでいる包皮が最後の抵抗を見せているが、それさえもあざ笑うかのように、紫色に充血した表皮がその間を割って、半分見えていた。
「なぜイブは、知恵の実を食べたのかな」
パンティが下へとずらされる。手で隠したくなる衝動を押さえようとすると、自然に顔が横を向いてしまった。
「蛇にそそのかされたから、だな」
パンティを脱がせ終わると、マタイが立ち上がり、そう答える。頭一つ高い位置に来たマタイの目を、ボクは上目遣いで覗き込んだ。
「そこに、食べたことのない果実があったから、だよ」
マタイのブリーフに手をかける。
「見えないものを見たくなる。知らないものを知りたくなる」
そう言いながらブリーフを下までずらした。マタイのものがボクの眼前に現れる。痛いくらいに膨張したものは、ボクのものよりもずっと大きい。そこに、マタイの心の奥底にある欲望と、背徳の誘惑を感じた。
立ち上がり、ボクのものとマタイのものを、重ね合わせる。
「それが人間の罪、だね」
きっとマタイも、罪を犯したがっている。
プレイ時間はもう半分が過ぎていた。シャワー室でマタイの引き締まった体を洗った後、バスタオルで水滴を拭き、そのままタオルを渡す。マタイは何か言おうとしたようだったが、言葉を飲み込み、シャワー室から出ていった。
すぐに自分の体にもソープを付け、手でこすっていく。硬くなったままの自分の男性器もソープで洗ったが、それも簡単に済ませ、口腔消毒液は使わなかった。多分、そのことをマタイは不思議に思ったのだろう。
穢れなき、なんてありえない。あらゆるものがいつかは穢れる。アダムもイブも、純粋ではいられなかったように。
バスタオルで体を拭き、シャワー室を出る。マタイが、ベッドに座って待っていた。
マタイには、まだ純粋な部分が残っている。でも、それも今日で終わり。ねえ、もっと、穢れてよ。
何も言わずに、マタイをベッドに寝かせる。もうマタイは、「何を」とも「なぜ」とも訊かなかった。
バスタオルを床に投げ捨て、マタイの体にまたがる。円を描くようにマタイの胸に手のひらを這わせた。
「男の乳首なんて、無意味の最たるものだね」
マタイの乳首をつまんでみる。マタイの眉が微かに動くのを見逃さなかった。そのまま撫で続けたが、それ以上マタイの表情に変化はない。体をずらしていくのと同時に、胸から徐々に下の方へと手を這わせていった。
「もっと見せてよ」
「何を」
「むき出しの、欲望」
マタイのものを右手で握る。それを上下に動かしながら、左手を伸ばし、床に置いていたバスケットからローションの入ったボトルを取り出した。
ボクの動作の一つ一つをマタイが目で追っている。
「どんな味だった」
手を止め、そうマタイに訊いてみる。
「何が」
「ボクの、アソコの味」
一拍の後、「味は、分からない」とマタイが答えた。
「セックスだけじゃなくて、フェラも、されたことないんだよね」
マタイの感情の無い顔に、今日はどんな表情が現れるんだろうか。
「ああ」というマタイの返事を合図に、マタイのものに口を近づける。鼻をかすめる男の匂い。一瞬の躊躇いの後、それを口に含んだ。
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