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9 生命に至る門は狹く、その路は細く、之を見出す者少なし

 それが持つ本来の機能的目的を考えるならば、男性器というものは女性器の中へ挿入されるべきものである。しかし今私のものは、その生物的機能から逸脱し、ルカの中へと深く差し入れられていた。  ルカは、少しの間視線を上げていたが、ふと我に返ったように私を見下ろす。そして私の肩を押さえ、ゆっくりと動き始めた。  入り口は狭くきつく、私のものを締め付けている。ルカが腰を上下に動かすにつれて、圧迫される部位も上下に動いた。ルカの体内に入り込んだ部分は、なんともいえぬほどの生暖かさに包まれるが、ルカが腰を浮かせると、外気で冷やされる。ルカが腰を下ろすと、飲み込まれるような生々しさが、私の局部ではなく、脳を鷲掴みにした。  内部の粘膜は潤いが足りず、その動きには強弱様々な制動を感じる。ルカが行う上下運動は滑らかとは言い難い。それでもルカは眉を寄せ、何かに耐えるような表情を見せながら、腰を強引に動かしていた。そして私をじっと見つめ続けている。自らの動きで、私がどのような反応を見せるのかを観察するかのように。  ルカが動けば、私の顔の表情筋が私の意に反して反応する。それは、苦しみや痛みといった刺激によるものとは全く別の形を取っているのが自分でもわかった。私が何らかの反応を見せるたびに、ルカの口元に妖しい笑みが浮かぶ。 「もっと、見せてよ」  ルカが動きを速めていく。それによって、私が反応を見せる間隔は短くなり、反応ひとつひとつが大きくなった。それがルカの衝動を駆り立てていく。 「もっと」  ルカがさらに動きを速めた。  ルカと私のこの行為にどんな意味があるのか。それを考えることを、せり上がる神経の昂揚が許してはくれない。  無知のままであれば、楽園にいられたのだろうか。しかし無知であるがゆえに、そこが楽園であると思い込まされていたのではないか。  何かを知ってしまえば、その知識は生命の終末まで取り去ることができない。まるで魂の穢れのように、二度と浄化はかなわないのだ。それこそが罪。それこそが、禁断の果実だった。  私の体の上で、ルカが躍る。  見よ、あらゆる物の意味が無意味となる世界に降り立つ者を。なぜ、これほどまでに美しいのか。  頭の芯と、下腹部の奥底で、魂が讃美歌を唱じている。理性が屈伏され、沸き立つような快感に身を委ねた。  その瞬間、本能の粘塊が二度、三度、四度、私の欲望の先端からルカの中へと放たれる。理性が、私の口を使って断末魔の叫びをあげた。  突き上げるような、それでいて叩き落とすような衝撃が私を襲う。虚空へと昇っていくのか、深潭へと堕ちていくのか、分からぬままに果てを迎え、そして闇が訪れる。  目は開いているが、何も見えない。ただ、二人が発する荒い呼吸の音が、合わさり、共鳴し、部屋の中に響いた。  ルカの手が、私の顔に触れる。私の目に光が戻った。 「そんな声、出すんだ」  そうつぶやいたルカの口が、その音が消えぬうちに、私の口をふさぐ。私の方から舌を絡め、そして彼を抱きしめた。  体の内からあふれ出てくる衝動が、彼を求めてやまない。彼の腕を取り、体を起こす。ルカをベッドへと寝かせると、耳から首、そして胸へと舌を這わせた。  と、この新しい世界にまったくもって不釣り合いな音が鳴り響く。生命の息吹も、その気配さえも感じない電子音に、思わず眉をひそめずにはいられない。 「時間、だって」  私の下で、ルカがため息交じりに宴の終焉を告げた。

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