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 湿気にこもった部屋の空気が、空調によって次第に冷やされていく。リビングに戻ると、ルカは部屋が完全に冷え切るのを待ちきれないように、冷気の吹き出しの前に立ち、体全体で受け止めるために腕を広げ、顔を少し上げた。  首にリボンの巻かれてある白いブラウスが、勢い良く噴き出す風になびいている。スカートは、ベージュ色の生地に白、黒、赤の線でチェック柄が描かれていて、裾はちょうど膝の位置くらいにあり、そこから細い脚が下へと伸びる。 「脱がせて」  ルカが、後ろにいる私へそう命令した。腋の下から腕を回し、ブラウスのボタンに手を掛ける。しかしルカの細い手が、私の手をつかんだ。そのままルカが顔だけを後ろへと向け、私と唇を重ねる。 「パンティから」  唇が離れると、ルカはそう囁いた。その声に従い、スカートの中に手を入れる。 「興奮する?」  ルカの細い右腕が、後ろ手に私の首へと巻き付いた。私に送る視線は、色香で惑わそうというものではない。自らの行為が私に与える影響を純粋に知ろうという、好奇心に満ちた目だった。 「興奮する、という状況がどんなものか分からない。だから、今興奮しているかどうか、答えることはできない」  そう答えると、ルカの左手が私の手を捕らえ、ルカの下腹部へと導く。 「こういうこと」  下着の生地越しでも、ルカのものが硬くなっているのがわかる。 「なら、私に訊かずとも、分かることだ」  私の言葉に、ルカの左手が私の下腹部へと回る。相変わらずルカの目は物憂げな様子ではあったが、その口からどこか満足げな吐息が漏れた。  下着を下へとずらしていく。脱がされるためだけに存在するかのようなもの。そう考えるならば、その下着はその目的を達しようとしている。しかしそれは、この世に生み出された当初の目的とは遠くかけ離れていることだろう。実存が、その創造主の思惑を超えているのだ。  身をかがめ、下着を床までおろす。それに合わせて、ルカが下着から足を交互に抜いた。そして振り返る。 「知恵の実を食べて、まず最初に感じたのが羞恥心だったなんて、不思議だね」  スカートの裾を両手でめくりあげ、しゃがんだままの私の眼前に、自分のものを突き出した。  ルカの言う、興奮という名の心理的作用が、充血という身体的作用となって、上へと硬く突きあがっている。それは、まさに今咲こうとしている百合の蕾のように見えた。 「恥ずかしいという感情は、人間と動物の大きな違いの一つだ。人間と動物が分かれる瞬間の記述だとすれば、不思議ではないと思うが」  ルカが望んでいるだろうと思い、しゃがんだままでルカを見上げる。 「服を着るのは寒いからでしょ。恥ずかしいから服を着るわけじゃない。なのに、服を着るから脱ぐのが恥ずかしくなる」  ルカの手がスカートから離れ、私の頭に触れる。そして、スカートの下から顔をのぞかせる形となったその百合の蕾へと、私の顔を導いた。 「最初から着てなければ、恥ずかしくなんかないのにね」 「ルカは、恥ずかしくはないのか」 「仕事の時はね。でもなぜかな。今は、なんか、恥ずかしい」  そして最後に、「舐めて」とつぶやく。初めてルカとあった日と同じような状況だったが、それを口に含むことに、もう抵抗は感じなかった。  常識から外れることを羞恥と思い、罪と感じる。  生命の理から外れることを悪と思い、罪と感じる。  しかしそれは、本当に罪なのだろうか。  本能の導くままに、口を動かす。部屋に、ルカの嬌声が響き渡った。

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