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 今のところ取り掛かるべき仕事の依頼はない。それは収入という面からすれば、顔をしかめずにはいられない状況だ。しかし、しばらくの間はルカと一緒にいられるということでもあり、私は内心、これまでの人生において感じたことのない興奮を押さえられずにいた。  どんな女性を前にしても、もちろん男性を前にしても、このような気持ちになったことはない。これは自分でも不思議なことであり、ルカに対してこのような感情を抱いていることに、戸惑いを感じずにはいられなかった。  ルカが、どこか不満げな様子でファミリーレストランのモーニングを食べる。  人が増えだした地下街を並んで歩いていると、眉をひそめながらも腕を組んでくる。  ブティックでシャツとキュロットを試着し、そっぽを向きながら「どう?」と訊いてくる。  それらに付き合っている内に、そのような戸惑いなど意味のないことだと思うようになった。そう、無意味なのだ。今私の中にある感情が、実際に存在しているものの全てである。  地下街から外へ出て、様々な服飾店が入る商業施設へと入る。するとルカが、建物の真ん中を割るようにそびえる観覧車を指さし、乗りたいと言い出した。  商業エリアのランドマークであり、ほぼ毎日のように目にするものであったが、乗ったことは一度もなかった。私が困惑するのを無視し、ルカは私を観覧車へと引っ張っていく。乗り込んでから頂上を経由し再び地上へと戻るまで、ゴンドラの中はルカと私の二人しかいない世界であった。私たちは何度もキスをし、そしてお互いの性器を咥えあった。  ランチ、そして再びショッピング。ルカが唯一躊躇うようなしぐさを見せたのが、ランジェリーショップの前に来た時だった。ルカは、私の顔をうかがうような表情を見せたが、私が無言でうなずくと、「待ってて」という言葉を残し、しばらくの間店の中で下着を選んでいた。  これまでの買い物はすべて私の支払いだったが、下着だけは自分で払ったようだ。店を出てきたルカに「着替えは取りに行くのではなかったのか」と尋ねると、ルカは「色気のないものしか持ってないから」と私をにらんだ。  そのような表情はルカの照れ隠しなのだ。だから私は、軽く返事をするだけにする。するとルカは顔をそむけながらも、私の手を握りしめた。  夕食は家で作ることにして、一度戻ることにする。購入したもの、ひいてはルカのものをどこにしまうか。雑多に散らかった寝室を眺めながら思案したが、ルカは「整理が必要だね」といいながらも、私の体に腕を絡め始めた。 「整理をするのではないのか」と尋ねたが、ルカは「明日できるし」と言って、私が着ていたシャツのボタンを外し始める。汗をかいた体をシャワーで洗いあい、空調が冷やす空気の中、リビングで抱き合った。 「明日という日は、決して来ることはない」  キスの後、私はルカにそう言った。 「どういうこと」  ルカが怪訝な表情を見せる。 「『明日』になれば、『明日』は『今日』になるからだ」  私がそう答えると、ルカは「マタイらしいね」と軽く噴き出した。 「それじゃ、『今日』という日は二度とこないなんて嘘だね。毎日が『今日』だよ」  そう言って、また笑う。 「でも、『今』は今しかないね」  しかしそこで、ふとルカが真顔に戻った。 「そうだな」 「じゃあ、『今』しかできないこと、しようか」 「何を」 「服や下着の買い物は、男ではできないこと。今からするのは、女ではできないこと。でも、もしかしたらボクもいつかできなくなること」  そう言うとルカは、私をラグが敷いてある床に寝させた。

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