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「出しても飲みこまないで、そのまま口にためておいて」  その言葉を合図に、ルカが自分のものを私の口に咥えさせる。そのまま私の体の上にまたがり、ルカも私のものを咥えた。本来、挿入すべき場所ではないところで、互いの性器に刺激が加えられていく。部屋には、空調が奏でる低く定調なリズムと、唾液が立てる淫猥な水音だけが響き渡った。  まさに無意味の極致たる行為である。昂ぶりの頂点を迎えた性器の先端から互いの口腔に精液が放たれたとして、それが生来持つべき生物的目的を果たすことはない。嚥飲により消化管内部へと入れば、あるいは生命の精気となりえるだろう。ルカはそれすらも許さないという。  悦びの中、私は夢中で硬くなったルカのものを自らの口の中で抽送させた。その百合の蕾は、開花を待ちきれんばかりに先端を軽く開いているのが、舌の感覚を通して伝わってくる。それが抽送の度にめくれていった。固く閉じたままの蕾を無理やり引き裂き、その雌蕊が引きずり出されているようで、その過度とも思える刺激がゆえに、程せずしてルカは私の口の中でその百合の蕾を大きく震わせ果ててしまった。  生々しいまでのルカの魂の息吹が、私の口の中で広がっていく。それは決して実を結ぶことのない種であり、死ぬことすら許されぬ幾粒もの麦であった。その純然たる無意味さに私の魂も震え、その息吹がルカの口の中へと二度三度吐き出される。  お互いの精液をお互いの口の中へと放つ。どこまでも無意味とも思える行為は、しかしまだ終わりではなかった。  ルカが身を起こし、私を見下ろす。そして、口元に妖しい笑みを浮かべながら、私と口を合わせた。舌と舌が絡み合い、精液と精液が混ざり合う。そこに唾液が加えられ、二人の魂が懸濁されていく。神が創りし生命の輪を冒涜するような行為の末に作られた液体は、甘露となって、二人の喉の奥へと音を立てて落ちていった。  それでもなお味わい足りないのか、ルカの舌が私の口腔に残る最後の一滴をも飲みほさんとするかのように身をくねらせる。それに抗うかのように、私の舌もルカの口腔を踊り狂い、またしばらくの間、二人の舌が絡まり合い続けた。  後から後から湧き出る唾液が、ルカの口元からあふれ、私の顎を伝っていく。ようやく離れた二人の唇の間を、魂の懸濁液の名残が煌めきを放つ糸となって繋いでいた。 「同じ種なのに、男同士じゃ、混ぜても子供ができないなんて、不思議だね」  そう言ってルカがその細い体を私の胸へと預ける。ルカは、意味無き我が生に現れた天使だった。だからこそ私は、その軽さに恐怖し、ルカをきつく抱きしめた。  無駄な肉の一切がないにもかかわらず、その体は随分と冷たい。 「邪魔になったら捨てていいよ」  私の耳元で、ルカがそうつぶやく。 「嫌になったら、出て行って構わない」  ルカの耳元に、そうつぶやき返した。 「絶対、無いよ」  ルカがそう答える。 「なぜ」  この世に絶対などありはしない。形あるものはいつか壊れ、形なきものはいつか消え失せる。 「だって」  ルカが、私の腕の力に抗い身を起こした。ルカの髪が、私の顔を撫でていく。 「もう、戻れないから」  そう言うとルカは、前髪をかき上げ、そして笑った。

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