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 部屋に戻り、ルカと二人、リビングで遅い夕食を取ることにした。ソファは使わず、ラグを敷いた床に腰を下ろす。クーラーから噴き出す冷気の音をベースに、野菜にフォークを突き刺す音と咀嚼したものを飲み込む音が曲を奏でている。話という話もなく食事が進んでいく、ただそれだけの空間ではあったが、以前とはまるで違うように思えた。  ルカが視線を上げ、私を見つめている。いや、目の焦点は中空のどこかに合っている風であり、別に何か言おうとしているわけではなく、ただ何となく考え事をしているだけのようだ。 「どうした」  そう声を掛けると、ルカはふと我に返ったように私の目に焦点を合わせた。 「別に」  そう言って、また食べることに戻る。つれて、私がフォークを動かし始めると、ルカが「沈黙の共有」とつぶやいた。 「それがどうかしたのか」  フォークを動かす手を止め、ルカに訊いてみる。 「なんか、いいね」  ルカの表情はつまらなそうでも、不満げでもあり、およそ良いことを言っている風には見えない。しかしそれは、ルカが嘘を言っているというよりかは、どういう表情をしていいか分からないといった風だった。  ルカの方が先に食べ終わっていて、私が食べ終わるのを、ルカは表情そのままにずっと見ている。膝を抱え、その上に顎を置きながら。艶とした脚には、ストッキングのようなものは何もはいていなかった。  私は、最後の一口を口に放り込むと、二人分のパスタの容器を持ってキッチンへと向かう。ルカが瞳だけを私を追うように動かした。  プラスチックの容器を水で洗い、水切り籠に立てかける。すると、後ろから前へと私の体に白く細い腕が回された。 「いいんだよね」 「何がだ」  問いかけの意味が分からず、そう訊き返す。するとルカは、私をきつく抱きしめ、背中に顔を押し付けた。 「ここにいても」  ルカの言葉と熱い息が背中のシャツを震わせる。 「帰らなくていいのか」 「荷物は取りに行くよ。でも、ボクの帰るところは」  ルカはそこで言葉を止めた。私の胸を抱くルカの腕にそっと手を添える。ルカが一つ大きく震えた。 「ここに帰ってくればいい」  そう答えると、ルカにシャツを引っ張られ、後ろを向かされる。ルカは乱暴に私の顔を掴み自分の方へと引き寄せたが、唇が触れ合う直前で動きを止めた。  鼻と鼻、そして額と額が触れ合う。ルカの瞳から涙が湧き上がり、目尻からこめかみへと流れ落ちる。  でもそれは、嬉しいからでも悲しいからでもない……そう感じらる。  なぜ。  しかしその言葉は、ルカの唇によって奪われてしまった。  熱い口づけと抱擁。そのまま二人、キッチンで互いの服を脱がせ、また抱き合う。その後の激しい愛撫によって、互いの肌、そして互いの性器が、互いの唾液で覆われていった。  ルカを流しの方へと向かせようとすると、ルカがそうはさせまいと抵抗し、反対に私がルカに背を見せてしまう。ルカが男である証が私にあてがわれ、そのまま中へと入ってきた。激しい抽送の後、ルカが私の中へとその精を注ぎ入れる。ルカが果てるや否や、今度は私がルカの中へと自分のものを深く突き立てた。部屋に響く嬌声は、ルカのものなのか、それとも私自身のものなのか。  体の中に収まらずに外へと出されている部位を、収めることのできる空洞へと挿入する。それはまるで、指向すべき対象が無いまま彷徨い出た心の一部で、互いの心の虚無を埋め合っているように思えた。

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