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 激しい愛撫の後、私の中にルカのものが入ってくる。その異物感が間断なく私に課してくる苦痛に、どこかしら背徳的な香りを感じずにはいられない。それが私の魂を震わせてしまうのだが、その度にルカの表情に妖しさが増した。  ルカは、射精による快感を得たいがために私を抱いているのではない。それは私にも分かる。きっと、私を犯すことによって得られる感覚を愉しんでいるのだろう。それが優越感なのか、それともある種の嗜虐性の発露なのか、それは分からない。  新しい命を生み出すはずの(エロス)的行為、その中に見える破壊(タナトス)的感情が、ルカを一層美しく輝かせている。  ルカの左目にかかる前髪に右手を伸ばす。それを掻き分け、そのまま額に触れると、私の指にルカの汗が絡んだ。  化粧などしていなくても、ルカの目元はどこか青みがかっている。その目が細まり、口元に笑みが浮かんだ。  指に着いた雫を口に含んでみる。飲めば飲むほどに渇きを覚える、魔性の甘露の味が、私の口の中に広がった。  頭の中から全身へと、快感が押し寄せる波のように広がっていく。それと同時にルカも私の中で果てたが、眉を顰め苦しげな表情のまま、ルカは私の目を見続けていた。  ふふっと声を漏らした後、ルカが私の首に手を回し、頬を寄せる。 「マタイ、なんだかかわいいね」  頬ずりをしながら言ったルカの言葉に、どういう意味かと尋ねてみたのだが、ルカは「別に」とだけ答えた。  低く唸るような音がして、クーラーから冷気が吹き出し始める。 「とっちゃっても、ちゃんとたつ、かな」  ふと、ルカがそうつぶやいた。 「手術、したいのか」 「わかんない。カウンセリングがあって、しばらくホルモン投与しながら様子見て、だろうけど。嫌かな」  様子をうかがうようなルカの口調に、私は「金の心配はしなくていい」と答える。  「ありがとう」  そう言って、ルカはより一層私に頬を摺り寄せた。  通院や手術の費用くらいなら私にも出せそうだ。湯田衿佳から受け取ったお金は、ルカの将来のために残しておこう。  しかし問題はそこではない。ルカが性転換手術を本当に受けたいと思っているのかどうかだ。私の為、というのなら止めなければならない。  ルカの美しさは、性別を超越したもの……ありのままだからこそ、そう思えるのだろうから。  ルカはそれが湯田衿佳から受け取ったものだと知れば嫌がるだろうか。ルカと湯田衿佳の関係がいったいどういうものなのか、もっと詳しく知ることができれば、それも分かるだろう。  私の隣に横たわる、その確かな体温は、無意味だと思っていた私の人生にどのような意味を与えてくれるのだろうか。  自分の為ではない。もちろん子孫を残すためでもなく、金の為でもない。ルカの為に生き、ルカの為に死ぬ。そこに見出すことができた真実(イデー)が、余りにも純粋で貴尊であるように思えた。  思わず、ルカの腕をベッドに押さえつけ、唇を奪う。絡まる舌の感触がたまらない程に愛おしく思えた。 「うれしい」  唇が離れた後、ルカはそう言って無邪気に笑った。  と、突然、寝室の電話が鳴る。時計を見ると、もう十時を過ぎている。何も身に着けていない姿のまま立ち上がり、少し不満げな表情を見せるルカに向けて言葉を発しないように言った後、受話器を取った。 「はい。又井探偵事務所です」  私の言葉に、一拍置いた後、受話器の向こう側から男の声が聞こえた。 「夜分すみません。サエグサいうものなのですが、お願いしたいことがありまして」

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