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「……好きだ」
伝えることは決してないと思っていた、本当の気持ち。
声は、隠しようもなく愛しさが滲んだ声だった。
瞬間、背中に回された腕が凌をきつくかき抱いてふたりの距離をゼロにする。
もう離さないと言わんばかりの抱擁に、凌はとうとう声を出して破顔してしまった。
「……ははっ。あーダメだ、お前ほんとめちゃくちゃ。何ひとりで徹さんたちにカミングアウトしてんだよ」
「だって、凌が親のこと気にしてるのなんて最初から分かってたし。急に離れていこうとするから、これは外堀から埋めるのが確実かなって」
「俺、自分のこと重いやつだと思ってたけど、お前も大概だよな」
「ふふ、似たもの同士で幸せになれるね」
「……そうだな」
そうっと広い背中に腕を伸ばして、ぎゅぅ、と力を込める。
もう逃げたりしない。この想いに応えよう。大丈夫、もう怖くない。
この優しい人を絶対幸せにしてやるんだ――誰でもない、俺が。
「俺も、ずっと嘉貴が好きだった。一緒にいることを、諦めないでくれてありがとう。俺にもお前のこと大事にさせて。これからずっと、一生」
逞しい腕の中、ありったけの想いをぶつけると痛いくらいに抱き締められていた身体をべりっと勢いよく引きはがされてしまう。
びっくりして丸くした目に、下唇を噛む嘉貴の表情が映る。凌はその耳が鮮やかな朱色に染まっていたのを見逃さなかった。
「……もう一回」
「は?」
「もう一回。今度はちゃんと、俺のこと見て言って?」
ねだる声がどこか切実で、そのかわいさにうっかりときめいてしまった自分に苦笑した。
「……好きだ」
一回なんて、勿体ぶるつもりはない。何回でも、何百回でも言ってやる。だってずっと言いたかったんだ。
「好きだ、嘉貴」
唇が重なる直前、きらきらと揺らめく瞳と視線が絡まる。
泣くなよ。と紡ぐ代わりに、慰めるように優しいキスをした。
凌の瞳からも、ころりと同じ色の雫がこぼれ落ちた。
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