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5-7*

 嘉貴のマンションは無駄にでかいし、部屋数も多い。  大学生のひとり暮らし四部屋もいるはずもなく、ひと部屋まるっときなこの部屋にしてある。基本はリビングにいるきなこだが、寝る時は誰が教えたわけでもなく必ず自室に戻って寝床で寝る。 自分のアパートの六畳一間よりもはるかに広い部屋でのんびりと生活しているお猫様には苦笑いをしたものだが、今日ほどきなこの部屋がちゃんとあることに感謝した日はない。 「ん……っ」  クイーンサイズのベッドは男ふたりで乗っても動じることなく、ふかふかのマットレスが押し倒された凌を包み込むように受け入れてくれた。  影が落ちると共にくちづけも落ちてきて、覆い被さってきた嘉貴は唇を離しては鼻先が触れるほどの近さで凌を見つめて、何度も口を啄んでいく。 「凌……口開けて?」 「は、ぁ……んぅ」  おず、と開いた口腔に侵入してきた舌は、歯列をなぞり上顎を擽ってから凌のそれをいやらしく絡め取ってしまう。絡む舌は思っていたよりずっと熱く、自分が砂糖だったら一瞬で溶けてしまっていたかもしれない。  荒くなる呼吸と唾液の混ざり合う水音が空間に満ちて、その淫靡な空気に頭がくらくらした。  ちゅう、と舌を吸い上げて、熱に浮かされた声で嘉貴が問いかける。 「気持ち良かった……?」 「き、聞くなよ……」 「ふふ、気持ち良さそうな顔してるもんね。良かった。即物的でごめんね? でもやっと凌のこと抱けると思うともう我慢できなくてさぁ」  せっかく淹れた珈琲に手をつけることもなく寝室へと連れ込んだことに、いまさら羞恥心が込み上げてきたらしい。眉を下げて恥ずかしそうに笑う姿がかわいらしくて思わず頭を撫でると、それを許しだと理解した嘉貴は瞼にひとつキスを贈った。 「服、脱がせていい?」 「自分で脱げるって」 「俺が脱がせたいの」  やんわり抵抗する凌なんてお構いなしにオーバーサイズのニットを勢いよく脱がせて、インナーシャツのボタンを器用に外していく。風呂上がりや着せ替え人形状態の時に何回も見せてきた時とはわけが違う。嫌でも緊張してしまい、小さく唇を引き結ぶ。  無防備に晒された凌の上半身を見つめる嘉貴の眼差しは隠すことのできない肉欲を孕んでいて、床暖房まで完備された部屋で寒さを感じることはないはずなのに、ふるりと身体が震えてしまった。 「やばいな……俺があげた服、自分で脱がすのって興奮するね」 「へんたい……」  凌の罵倒に笑顔で応え、嘉貴の大きな掌が胸を撫でる。心臓のあるところ。いつもよりもずっと速い鼓動をその手で感じて、すぐそばにある乳首を指先でくすぐる。

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