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クウゴ
雨。雨。雨。
喪服を身に纏い、墓の目の前で立ち尽くす。
『大丈夫。僕、死なないから。』
そう言ったはずなのに、呆気なく死んだ。
白い病室。
穏やかに死んだ。
『愛してる…。』
笑顔で死んだお前を前に俺はただ立ち尽くすしかなかった。
何度季節が過ぎ去っただろう。
あいつは秘書として現れた。
異例の引き抜きで雇っただけあり、優秀だった。すぐに俺の専属の秘書として働くようになった。
真面目で口煩く、融通も効かない。
ただふと笑う顔は誰よりも美しかった。
関係を持ったのはいつだったか。
飲み会で酔った勢いだったか。
あまり覚えていない。彼は知らぬ間に当たり前のようにそこにいるようになっていた。
空っぽだった胸に溢れんばかりの想い。
膨れる感情。
満たされるのは失った愛。
溢れる。膨れる。満たされる。
その片隅で、一人幸せになろうとすることへの罪悪感。
その罪悪感が、彼を傷つけていようとは思わなかった。
全て失ったと気がついた時にはもう…
彼はどこにもいなかった。
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