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第7話

 そこで、目が覚めた。覚めてしまった。  上体を起こした俊は、まだ夢の中そのままに高鳴っている胸をそっと押さえた。  当時の気持ちがあまりにもリアルに迫ってきて、現在の俊を息苦しくさせていた。  上月和人のことを見つめているだけで幸せで、でもたまらなく苦しくて、出口のない迷路をぐるぐると回りつづけているみたいにひたすら切なかった日々。  甘くほろ苦い思い出の中では、和人は一度も俊を振り向いてはくれなかった。  けれど信じられないことに、今の俊は知っているのだ。  彼の声を。彼の表情を。向けられる眼差しの色を。  終焉のもたらした奇跡――そういうものかもしれないと、俊は嬉しさと共に運命の不思議を噛み締めた。  目覚まし代わりにかけているラジオが、ヒーリングミュージックを流している。もう通常の番組はやっていない。24時間流れているのは、気持ちを落ち着かせる癒し系の音楽だけだ。  俊はカレンダーを確認した。そして、運命の日まであと50日と知る。  ほのかに胸内に立った漣みたいな不安のざわめきは、和人のちょっと斜に構えた微笑を思い浮べると不思議と治まるのだ。  また今日も、彼に会える。

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