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第9話

 1ー9 裏切り  家へと帰る道々に2人が話していた内容から、俺は、事態を理解した。  どうやら、勇者一行として魔王討伐の旅に出ているはずのハツ様と聖女が2人で姿を消したらしい。  しかも、それと同じくして2人の婚約者である奥様と勇者のもとに『婚約破棄状』が届いたらしい。  「信じられないわ、私というものがありながら乳臭い聖女と駆け落ちするなんて!」  乳臭いって。  俺は、以前に一度だけ見かけたことのある聖女のことを思い出していた。  聖女のルルゥ・ジストニア様は、確か、まだ15歳の眩しいほどの美少女だった。  このジストニア王国の第3王女であるルルゥ様は、子供の頃から光魔法の使い手として有名だった。  光魔法とは、王族しかもたないといわれる力だ。  ルルゥ様は、そのお力で国民のために貢献されていた。  ほんとに、ハツ様が彼女と駆け落ちされたのなら、俺は、ぜひ2人を応援したい。  「ルルゥは、乳臭くなんてないっすよ、アカネ殿」  勇者が恐る恐る言うと、奥様は、ぴしゃりと言い放った。  「おだまり!15歳なんて、乳臭いガキじゃないの!」  いや。  俺は、否定した。  15歳舐めんなよ!  俺が一度だけ見たことのあるルルゥ様は、確かに幼い感じではあったが、美しくって。  俺は、ルルゥ様と逃げたハツ様を責める気にはならなかった。  奥様は、28歳。  この世界では、15歳で成人し、普通は、十代のうちに結婚することが多い。  それからすれば、奥様や俺なんかは婚期を逃してしまった者と見なされたっておかしかない。  うん。  俺は、心の中で舌を出していた。  奥様とルルゥ様では、勝負にならない。  というか、ざまぁねぇな!  「あんた、今、心の中でざまぁねぇな、とか思ったでしょ?ティル」  奥様は、妙に察しがよかった。  俺は、そっぱを向いてとぼける。  「そんなこと思っていませんよ、奥様」  「ウソ!」  奥さまが不意に涙ぐんだ。  「私だって、わかってるのよ。みんなが私のこと能無しの居候とか言ってること。ハツのことも、こんな女を押し付けられて気の毒だとかいってることも」  奥様は、顔をグシャグシャに崩壊させて泣き続けた。  「どうせ、私は、とうのたったおばさんだし、かわいくもないわよ。だけど、こんな風に裏切らなくたっていいじゃない?」  

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