２ー４　恋は、謎 　「自分、ルルゥをなんとかして嫁にしたくって、いろいろ努力したんっすよ。まだ、誰にも攻略されてないダンジョンを攻略してみたり、ドラゴンを倒してみたり。で、ようやく王様の許可を得てルルゥと婚約できたんす」 　うん。 　勇者と聖女の婚約は、あっという間にまとまって国中が大騒ぎになったんだ。 　俺は、頷いた。 　「知ってます。なんでもお似合いの二人だってもてはやされてましたよね」 　その当時、世間では、結婚ブームが起きたんだ。 　まあ、底辺の冒険者だった俺には、そんな浮いた話はなかったけどな。 　アニタス様は、深いため息をついた。 　「自分がルルゥの気持ちに気づいてやれなかったのが悪かったんすよね。きっと、ルルゥは、まだ結婚なんて考えてなかったんだろうし。辛い思いをさせてしまったんすよね」　 　アニタス様は、マジで好い人だ。 　もちろんまだルルゥ様に手を出したりはしてないし、たまに会って一緒にお茶したりしていたらしい。二人が一緒に魔王討伐の旅に出るまで親しく話をすることすらなかったらしい。 　「で、王宮魔導師だったハツは、ルルゥの魔法の先生だったんすよ」 　ハツ様は、王宮魔導師の中では一番若かった。 　といっても、ルルゥ様とは、倍以上年が離れていた。 　二人は、教師と生徒の間柄でしかなかったのだ。 　それが、なぜ、駆け落ちなんて。 　「自分には、理解できるっす」 　アニタス様が小声で呟いた。 　「ルルゥは、本当にいい子っすから。側にいたら絶対に好きになっちゃいますよ」 　マジか。 　俺は、ため息をついた。 　ハツ様。 　奥様の婚約者でもあるハツ様は、奥様と婚約されるまでは、ジストニア王国の社交界の華だった。 　そこそこ男前で、地位もあるし、なにより将来の辺境伯だ。 　有望な結婚相手として超人気があった。 　奥様が現れるまでは。 　なぜ、奥様？ 　俺は、ずっと疑問に思っていた。 　確かに、奥様は、魅力的でないわけではなかった。 　この辺りでは珍しい、漆黒の髪を長く伸ばした黒い瞳の神秘的な大人の女性だ。 　だけど、ハツ様が選ばれる様なタイプではないような気がするのだが。 　まあ、俺みたいなろくに恋愛もしてこなかったおっさんには、わからない話だったがな。