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第31話

 3ー3 聖女?  俺が果実水を飲み干すのを見守っていたテオが、満足そうに頷いた。  「それでいい。だが、お前、顔色が悪い。少し休んでいろ」  テオがぽんと俺の頭を撫でた。  なんで。  こんな、優しいんだ?  俺は、立ち上がろうとした。  「もう、心配するな。俺は、大丈夫だから」  「バカが!」  テオが俺を抱え込むと膝の上にのせた。  うわっ!  俺は、恥ずかしさに頬が熱くなるのを感じた。  ふと視線を感じて振り向くと奥様とミミル先生がこっちを見ていた。  うん?  二人ともなんか、生暖かい目で俺たちを見つめて微笑んでいる?  俺は、なんだか嫌な予感がしてテオから離れようとした。  だが、テオは、俺を離そうとはしなかた。  俺も、体に力が入らなくて。  どうも、最近、体がだるくって。  結局、俺は、テオの腕の中に抱かれたままいつしか眠り込んでいた。  気づくと俺は、自分の部屋に寝かされていた。  「うぅっ・・」  体が。  熱くって。  俺は、身動ぎした。  「気がついた?」  なぜか、枕元に奥様がいて、俺を覗き込んでいた。  「ほぇっ?」  俺は、驚いて飛び起きた。  「なんで、奥様がここに?」  「あなたが寝込んでるから看病してたのよ、ティル」  奥様が優しく微笑んだ。  「そんなことより、当分は、お休みしてゆっくりしてなさい。ほんとは、テオとキュウがあなたのことは看病をしたがったんだけどあなたを休ませるために私が看病することにしたのよ、感謝なさい」  「はぁ・・」  俺は、奥様に促されるままベッドに横たわった。  「しかし、家のことをしなくては」  「大丈夫よ。しばらくは冒険者ギルドから何人か職員がきてくれることになってるし。あなたは、安静にしてなさい」  俺は、熱にうかされ奥様の言葉を夢うつつできいていた。  奥様は、まるで聖女のような微笑みを浮かべて俺を見つめていた。  「ティル、あなたに話しておかなくてはならないことがあるの」  はい?  奥様の真剣な表情に俺は、そこはかとなく嫌な予感がしていた。  奥様は、ゆっくりと口を開いた。  「いい?落ち着いてきいてね、ティル 」  俺はただ奥様のことを見つめていた。  奥様は、黒髪に黒い瞳のどこといって目立つことのない普通の女だ。  少し難があるけど、こうして見ればなかなか可愛いといえるような気がする。  神秘的な黒い瞳に、長いまつげ。  ハツ様も。  こんな風に奥様に見つめられたことがあるのだろうか。

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