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第72話
6ー3 雪花の祭り
そうして、カナンの地に春が訪れると祭りが始まった。
まず、魔王城の前の広場に村人や、魔族たちが集まると、魔王城のバルコニーから魔王であるガイとこの辺りの領主であるルーミッジ辺境伯が人々に祭りの開催を宣言した。
そして、このカナンの村始まって以来最大の祭りである『雪花の祭り』が開催された。
『雪花の祭り』は、この季節に咲くラキアの花に由来した祭りで、1ヶ月の間、続く。
この日のために、奥様たちと魔族と領主たちが何度も話し合いをして計画されたこの祭りは、新たな時代の到来の宣言であり、また、長い不遇の時代の終わりを告げるものでもあった。
村人たちは、もとより、魔族たちもこの祭りを喜びのうちに迎えていた。
奥様たちは、この祭りの期間中、『通販』でいろいろな催しを行うことにしていたので、キュウや配達を担っている竜たちは忙しかった。
また、このカナンの村に新しく作られていた街の商店やら宿屋も大忙しだった。
この『雪花の祭り』にあわせて開業した人々も多く、なかなかの盛況を極めていた。
王都からの旅行者たちも多く訪れていたし、カナンの村は、浮かれ騒いでいた。
俺は、体調を考えて、というか、ガイの命令だったんだが、あまり祭り中は、魔王城から出ることは許されなかった。
ガイ曰く、「また、おかしな気になられたら困る」とのことだった。
だが、祭りの最終日に行われる予定のミミル先生とサナの結婚式には、参加することを許されていた。
まあ、ガイも同伴なんだがな。
祭りの間、ほとんど魔王城の中でこもっている俺を気の毒に思ってか、城の人々がみな、こぞって俺に菓子やらなんやらを差し入れしてくれたので、俺は、すっかり丸みを帯びてきていた。
まずい!
俺は、城の地下の騎士たちの訓練所で1人、筋トレして過ごすことが多くなった。
食っては、訓練をするのを繰り返していたが、俺の体は、いっこうに筋肉がつくことがない。
俺の薄い体は、筋肉がつきにくいのだ。
そういうことで、俺は、城にこもっているわけだった。
勇者は、ほぼ監禁状態の俺に同情してか、ほぼ、毎日、俺の部屋に入り浸っていた。
「苦手なんすよ、賑やかなの」
寂しげに笑っている勇者になんだか胸がいたかった。
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