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第74話

 6ー5 『聖王』ですか?  「自分、アカネが好きだ!だけど、国王の意思に反するのは、嫌だ!」  勇者様が力説した。  俺は、なんか腹がたってきていた。  また、だ。  また、奥様が捨てられる。  まあ、まだ勇者様は、奥様にコクってないからあれだけど、それでも俺的には、捨てられるようなものだと思う。  俺は、勇者様を睨み付けた。  「好きなようにされたらいいじゃないですか」  「でも」  勇者様が口ごもった。  「自分、アカネが好きなんっすよ。ほんとに、あんなに気楽に接することができる異性は他にいないっすから」  勇者様は、突然、俺の手を握ってきた。  「自分、どうすればいいんすか?アドバイスしてくださいよ、ティル先輩!」  「誰が、先輩、だ!」  俺は、勇者様の手を振り払うと素っ気なく言った。  「俺には、わかりませんよ!アドバイスなんてできませんからね!」  そうだ。  俺は、むかついていた。  この優柔不断な勇者様のもとにはこんなコイバナが集まってるのに、俺は。  俺は、くぅっと呻いた。  俺のこれまでのそういう話って、みんな男ばっかだし。  唯一の女の人がサリュウさんだったけど、魔王の怒りに触れて折檻されたし。  俺、ほんとにどうなっちゃうの?  「ほんとに、アドバイスしてほしいのは、こっちの方だちゅうの」  「あの、『聖王』ティル・ソニア様?」  誰かが俺に問いかけてきたので、俺は、そちらを振り向いた。そこには、茶髪のチャラそうな青年が立っていて俺を見下ろしていた。  この男は、さっきサティ様を囲む一団の中にいた奴だ。  俺は、憂鬱な気分だった。  『聖王』  それは、最近の俺の呼び名だった。  この魔王城の核となって以来、みなは、俺のことを『聖王』という2つ名で呼ぶようになっていた。  俺は、そんな大したもんじゃねぇし!  「なんでしょうか?」  俺は、気力をふり絞って笑顔で聞き返した。  俺を見てホッとした様子でその青年は、俺に話した。  「よければ、あちらでご一緒しませんか?」  はい?  なんで、勇者様じゃなくて、俺?  俺は、問いかけるように勇者様を見つめたが、勇者差は、ぶんぶんと頭を振った。  

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