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第87話

 7ー5 崇高な愛ですか?  要するに、俺との婚姻を利用して騎士と結ばれるつもりってこと?  俺は、複雑な気持ちだった。  だから、サティ様は、俺が異性愛者だといったときにあんなに取り乱したんだな。  「お前が家に帰っているのを知っていたのにすぐに迎えに行けなかったのは、あの娘が『白い結婚』を我々が受け入れなければ死ぬとか言い出してな」  ガイが、吐息をついた。  「まったく厄介な連中だな」  「そうなんだ」  俺は、ガイの胸にもたれてくすっと笑った。  サティ様の王国に対する細やかな反抗か?  自分の騎士と結ばれるためにこの婚姻を利用しようとは。  「なんか、複雑だな」  俺が呟くと、ガイが不満げに俺の耳を噛んだ。  「お前は、あの娘の方が私たちの愛よりいいというのか?ティルよ」  「そんなことはないけど」  俺は、あっけらかんと愛を囁くガイに少し照れてしまった。  なんか嬉しいような、恥ずかしいような気持ちでいっぱいになる。  俺は、ガイの腕を抱き締めた。  「ティル、結婚するんですって?」  久しぶりに魔王城を訪れた奥さまが俺ににやにやしながら近寄ってきた。  「しかも、親子どころか、孫ほど年下の子と」  「それは、事情があって」  俺は、自室の大きめのソファに浅く腰かけて奥さまを見上げていた。  「とにかく平和のためにするのであって、俺は、勇者様とは違いますから」  「あら、アニタス、かわいそう。フラれ続けじゃないの」  奥様は、手土産のお菓子を俺の部屋付きのメイドさんに手渡してにっこりと微笑んだ。  「まあ、いいけどね」  「奥様は、勇者様のことどう思ってるんですか?」  俺は、思いきって奥さまに訊ねた。  奥様は、少し考えてから答えた。  「戦友、かな?」  戦友?  俺は、問いかけるように奥様を見つめた。  奥様は、はぁっとため息をついた。  「何?ミミルといいあなたといい、なんで私とアニタスをくっつけようとするわけ?」  「べ、別に、そんなつもりは」  俺は、慌てて否定したが、奥様は、俺を責めるような目で見た。  「いい?私には、そんなものよりもっと崇高な愛があるのよ!」  はい?  俺は、ハトマメで奥様を見上げた。  なんですと?

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