93 / 110

第93話

 7ー11 産まれる!  シロアに掴みかかった俺は、ふいに足を止めた。  下腹部に激痛が走った。  崩れ落ちる俺をシロアが支えた。  「大丈夫か?『聖王』」  「大丈夫、じゃない」  俺は、シロアにしがみついたまま呻いた。  「腹、が痛い」  「腹?」  シロアがはっと息を飲むと俺を抱き上げ、叫んだ。  「治癒師を!」  シロアは、俺をベッドへと運ぶとそっとそこに横たわらせた。  すぐに部屋へと現れた治癒師は、猫の獣人の様だった。その赤茶色の髪の獣人は、俺の服を脱がせて俺の体を診察した。  「これは!」  その治癒師は、シロアに向かって怒鳴った。  「子供が産まれます。陛下は、どうか、部屋を出てください!」  「しかし」  シロアは、なかなか部屋から出ようとはしなかった。  「やっと手に入れることができたのだ。私の大切な番を」  「ですが、今は、離れてください」  その治癒師は、シロアを部屋から追い出すと俺に囁いた。  「これで、安心して子供を産んでいただけます。黒狼族の男は、自分の番とする者が別の男の子を産むと殺そうとすることがありますからね」  マジですか?  クロエと名乗ったその治癒師は、呼吸を乱している俺に告げた。  「私があなたとあなたのお子のことをお守りします。だから安心して出産されてください」  俺は、痛みに遠退いていく意識の中で涙の滲む目でクロエを見上げた。  クロエは、俺に命じた。  「大丈夫ですから、息を吐いて」  俺は、ゆっくりと深呼吸を繰り返した。  痛みが少しましになるとクロエは、俺を仰向けにして服をすべて脱がせると足を開かせて固定した。  初めて会った人たちの前でこんな目にあわされて、俺は、屈辱に頬を熱くしていた。  「もう、いいから!はやくもとの世界に帰してくれ!」  「なりません!」  クロエは、ぴしゃりと俺に言い放った。  「今は、あなたの体は、転移に耐えられません。ここで産んでいただくしかないんです」  そうしているうちに再び、あの痛みに襲われた。  おれはシーツを握りしめて体を強ばらせて息を喘がせた。  「どうか、いきんでください、『聖王』様」  「て、ぃる、だ!」  俺は、ぐぅっと下腹部に力を込めながら叫んだ。  「ティル!」  体を引き裂くような痛みに、俺は、歯をくいしばって堪えていた。  目の前に星が散る。  一瞬、意識が途切れて、そして、次の瞬間に赤ん坊の鳴き声らしき声が聞こえた。  「おめでとうございます、『聖王』様。元気な男の子たちでございます!」  マジで?  俺は、クロエが差し出したクッションの上に並んだ子供たちを見た。  そこには、2匹の子猫と1匹の子犬がいた。  はい?  俺は、そのまま意識を失っていった。

ともだちにシェアしよう!