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第103話
8ー8 対価ですか?
ルーミアたちの乳母のことがあっても、俺は、1人残してきたレクルスのことを忘れはしなかった。
それは、いつも俺の心を占めていて、俺を苦しめていた。
そんなある日のことだ。
魔王城の俺の部屋の壁から奇妙な植物が芽を出した。
それは、壁から蔦を伸ばしてきて、やがて、1つの大きな蕾をつけた。
「これは、人面草のようね」
ミミル先生が蕾を見て首を傾げた。
「人面草は、普通、とっても育てにくいし、こんなところから芽を出すなんて考えられないわ」
「もしかして」
俺は、壁に触れてみた。
「向こうの世界からのメッセージなんじゃ?」
「そうかもしれない」
ミミル先生が俺に告げる。
「たぶん、明日の夜には、花が咲くでしょう。そうしたら何かわかるかもしれないわ」
俺たちは、翌日の夜を待つことにした。
翌日の夜半過ぎ、ミミル先生の言った通り、人面草は、花開いた。
それは、小さな不気味な顔を持つ花だった。
地獄の底から響いてくるような呻き声をあげていたそれは、やがて、俺たちに告げた。
「レクルス・・ユクエフメイ・・テンイ・・ジュツ、ツカッテ、キエタ・・」
はい?
俺は、人面草の言葉をきいてパニックになりかけた。
レクルスが行方不明だって?
俺は、魔王城の壁に向かって拳を叩きつけた。
「レクルス!」
「待って!ティル」
奥様が俺の肩に手を置いた。
「まだ、続きがあるみたいよ」
「シンボクヲ、サガセ。シンボク、ガ・・シッテイル」
神木ですと?
俺は、今までにも何度か神木には出会っていたが自分から望んで会ったことはなかった。
「どうすれば、神木に会えるんだ?」
考えていたガイが、口を開いた。
「魔王城の地下、底深くにある封じられた扉が神木の庭に通じているという話をきいたことがある」
ガイが俺に告げた。
「だがあの扉は、危険だ。扉は、目的の場所に導いてくれるが代わりに対価を要求するらしい」
「対価?」
「ああ」
ガイが頷く。
「その者の持つ何かが奪われるのだ。何が奪われるのかは、誰にもわからない」
俺は、背筋がゾクッとしていた。
何が奪われるのか、わからない?
なんか、怖い。
でも、レクルスを探さなくては!
俺は、扉に向かった。
魔王城の地下深く、誰も行くことのないような地底にその扉はあった。
なんということのない古びた木製の扉だった。
「これを開くとお前は、確実に何かを1つ失うことになる」
ガイが言ったが、俺の決意変わらなかった。
もう2度とレクルスを失いたくはない。
俺は、扉を開いた。
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