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第104話

 8ー9 再会  そこは、何もない空間だった。  白い、奥行きも幅もわからない空間だ。  俺は、そこを漂っていた。  俺は、心の中で強く念じた。  神木へ。  はやく、たどり着かねばならない。  「珍しい客だな」  突然、どこからか声がきこえた。  目も前に白いローブをまとった少女が現れた。  それは、白い光が人の姿をしたような存在で、俺が勝手に少女だと思っただけで、他の者がみれば何かを別のものにみえるのかもしれない。  その何かは、俺を覗き込むときいた。  「何が望みだ?『聖王』よ」  「レクルスを・・俺の息子を探している」  「息子?」  それは、目をすがめた。  「なるほど、仔細は、理解した。すぐにお前の望みを叶えよう」  「マジで?」  それの言葉に、俺が安堵するのをきいて、それは、にぃっと笑った。  「喜ぶのはまだはやい。我は、奪う者。お前から何かを奪わねばならない」  「なんでもくれてやる!」  俺は、叫んだ。  「レクルスを取り戻せるなら、なんだってくれてやる!」  「なんだって、か?」  それは、ふいに興味をなくしたような顔をした。  「つまらん。お前の心に嘘はない。お前は、なんにもそれ以外を欲してはいない。意味のないものは、奪っても仕方がない。貴様からは、何も奪えない。だから、お前からは、時を奪うことにする」  「時を?」  「そうだ」  それは、俺には言った。  「我は、お前からその寿命を10年分もらうことにする」  寿命を10年分?  マジか?  俺は、ただでさえもおっさんだ。  そんなに寿命を奪われたら、すぐにでも死んでしまうかもしれない。  それでも。  俺は、承諾した。  「いいだろう。俺の寿命を10年くれてやる!」  俺は、言い放った。  「はやくレクルスをよこせ!」  「いいだろう」  それが答えた。  「いくがいい」  俺の目の前に光が溢れる。  「さあ、行け。聖なる王よ。そして、その欲するものを手にするがいい」  俺は、光の渦へと飲み込まれていった。  そして。  気がつくと俺は、あの草原の中の一本の巨木の下に立っていた。  「ここは」  俺は、辺りをきょろきょろと見回した。  巨木の影から何かがひょこっと顔を出した。  「父様?」  「レクルス?」  木の根元からレクルスが姿を現した。  その久しぶりに見る銀色の髪に俺は、胸がつまった。  「レクルス!」  「父様!」  俺は、飛び付いてきたレクルスを抱きしめた。  「すまなかった1人にして。これからは、ずっと一緒だ」  「うん、父様」  レクルスが俺にぎゅっと抱きついてきた。  「ずっと、ずっとだよ」

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