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第16話
「拝島さん、こんなところで会うなんて奇遇ですね」
昆さんが僕の前にすっと歩み寄ってくれた。
「迷子になったそちらの坊っちゃんに声を掛けただけですが、何か問題でもありますか?敵対する組に坊っちゃんを拉致されるよりはましでしょう」
遼は毅然とした態度で自分より年上の男性をきっと睨み付けた。
「また新しい男を連れて歩いているのか?男同士、いちゃついているんじゃねぇ。気色悪い。ヘドが出る」
拝島と遼に名前を呼ばれた男が唾を吐き出した。
「彼は龍成のコレだ」
遼が顔色ひとつ変えず小指を立てた。
「は?ふざけんな。冗談も休み休み言え」
「これでも真面目に言っているつもりですけどなにか問題でも?同性同士の夫婦が世間的に認められる時代が二十年後には必ず来ます。それまでお互い生きていればいいですけどね。光希は龍成より年上ですが、いずれ縣一家の姐さんになるでしょう」
遼の予言は見事に当たっていた。
それから十四年後。紆余曲折はあったけど、
俺は初恋を実らせ、遼と龍と結ばれ、カタギからヤクザの縣一家の姐さんになるのだから。
「坊っちゃん、帰りますよ」
拝島が手を差し出すと、ゆづるくんはその手にがぶっと噛みついた。
「この、クソガキが……丁重に連れていけ。丁重にだぞ」
拝島がまわりにいる男たちに命じると、ゆづるくんを脇に抱き抱えどこかに連れていってしまった。
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