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愛と狂気。

  「ただ見つめるだけでもいいじゃないですか! 別に貴方に迷惑をかけていないんですから、いいですよね――!?」 「なっ…!?」 「それとも俺の気持ちは貴方にとっては迷惑ですか!?」 「くっ…――!」  あいつは急に声をあげて怒鳴ると、ベルトをさらに上に上げた。その度に両手は上にキツく縛り上げられた。 「っ…! あ、阿川…! お前まさか俺のストーカーだったのか…――!?」  あいつのとんでもない本性を知った俺はそこで愕然となって、額から冷や汗を流して息を呑み込んだ。 「ストーカー? 違いますよ、俺は純粋に貴方が好きなだけです。そう純粋過ぎるくらい貴方をね…――。俺は貴方が車内で寝た時にチャンスだと思った。貴方に接近するチャンスはここだと思い、すぐに行動に出ました。それが今です!」 「なっ、何だとお前…――!?」 「終点の駅までついて行って寝ている貴方をこの駅に降ろした。そして、後は誰もいなくなるのを待って、貴方が起きるのを待った。そう全ては最初から仕組まれていたんです。こうやって2人きりになれたのは最初から偶然なんかじゃありませんよ」 「っ…阿川、何故だ!? 何故お前はそこまで俺の事を…――!?」 「そんなの決まっているじゃないですか、貴方が好きだからです。好きって理由があれば、例えそれが狂気でも正当化できます。俺は貴方を誰にも渡したくありません。こうやって貴方を愛したいだけです。だから俺の気持ちを受け入れて下さい!」 「バカなことを言うな…! お前は俺に何をしているのか本当にわかっているのか…――!?」 「ええ、そんなのは言われなくてもわかってますよ。だからこうやって葛城さんと今、楽しんでるじゃないですか?」 「お前っ!!」  阿川は平然とした顔でそう言うと、頭の中が急にカッとなった。 「ふっ、ふざけるなっ!! 人を無理やり拘束して、こんなのはただの強姦だ! お前、人を強姦するつもりか!?」  カッとなったままそう言い返すと、あいつは突然、俺の口を手で塞いできた。 「ンンッ!!」 「フッ…。人を強姦呼ばわりですか。じゃあ、お望み通りにそうしてあげましょうか? 無理やりに貴方をこのまま力ずくでモノにするのも悪くありませんね――」 「っ…!?」  あいつは狂気を秘めた瞳でそう話すといきなり口の中にハンカチを入れてきた。その瞬間、俺はゾクッとするような身の危険を感じた。

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