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化身―カフカ―

「ああ、こんなのはどうでしょうか。貴方の知り合いや会社の同僚に、このふしだらで厭らしい画像を全員に送信してバラしてもいいですか?」 「なっ…――!?」  その言葉に全身の血の気が退いた。 「一斉送信したらどうなるでしょうか? きっと会社にはもういられなくなりますね。それだけじゃ、ありませんよ。この画像をFacebookに投稿して世界中の人に貴方の淫乱な姿を見てもらうのも楽しいかも知れませんね?」 「クッ……!!」 「どうでしょうか葛城さん。素敵なアイデアだと思いませんか?」  あいつはそう言って笑って話した。まるで、悪魔のような男だ。あいつは卑怯なやり方で俺の事を脅してきた。 「や、やめっ…! たっ、頼む…! 阿川それだけはやめてくれ…――!」  アイツの脅しは俺の立場を危うくさせた。本人は只イタズラ半分に言ってるだけだが俺にとっては一大事だった。あんな姿を他人にみられたら、それこそ終わりだ。それこそ生きて行けない。あいつの卑怯なやり方に腹が立ちながらも、俺はそれを受け入れざるを得ない状況に追いつめられた。 「じゃあ、やってくれますね――?」 「っっ…! だっ、誰が…!!」 「じゃあ、この画像をバラすとしましょうか?」  あいつはそう言って片手で携帯を操作すると、今にもボタンを押しそうな気配を漂わせた。 「良いんですね?」 「くっ…――!」  あいつはそう言ってジリジリと精神的に追い詰めてきた。阿川の目は冗談ではなかった。こいつなら十分にやりかねない。俺を手に入れる為なら、何でもするような男だ。俺は極限の精神状態の中でそのことを悟った。いくら拒否しても状況は変わることもなく、次第に追い詰めらていった。目の前でアイツがボタンを押しそうな気配を漂わすとそこで遂に折れた。 「待て…――! わ、わかった…! する…! してやる…! お前の望みどおりしてやるから、頼むからそれだけはやめてくれっ!!」  ついに気持ちが折れると、あいつの脅しに屈した。それは言葉では言い表せないくらいの惨めで悔しい思いだった。  屈辱的だ……!  この俺が阿川の言いなりになるなんて……!  それも好き勝手……!  くそっ……!  あいつの脅しに屈すると、自分の唇を噛んで悔しい表情を浮かべた。阿川は俺が言いなりになるとニコッと笑ってきた。こいつは危ない。何をするか、わからない男だ。自分の本能はあいつを目の前にそう危険感を感じた――。

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