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残り火。

――あいつに無理やり抱かれた俺は、あのあと気を失った。そして、気がついて目を覚ますと朝になっていた。朝方、目を覚ました俺は駅のホームのベンチで寝かされていた。乱れた服も元どおりになっていた。まるで昨日の出来事が嘘のようだった。  一瞬、あいつに抱かれたのを思い出した。すると、身体中が急に熱くなった。無理やり抱かれたとは言え、最後は自らあいつを求めてしまった。そう思うと俺の中で何かが変わろうとしていた。フと気がつくとあいつの姿はなかった。そして俺は一人、駅のホームに取り残された。 「阿川…――?」  あのあと探してみたが、アイツの姿はどこにもなかった。人の体を散々好き勝手に弄って、最後は無理やり抱いた癖に、朝になったらあいつは勝手に姿を消していた。そして、駅のホームのベンチに座ったまま俺は半分放心状態になって考えた。動くと体が痛くてしょうがない。ついでに気分は最悪だ。それにまだ、あいつが俺の中にいるようだった。一方的な片想いに俺は振り回されて最後はヤられた。  男なのにレイプされて、よりによってその相手に、最後は抱いて欲しいと泣きながら懇願した。我ながらに情けない。いくら理性が切れたからと言ってあいつを求めるなんて自分でも信じられなかった。  俺は普通の人間だ。男なんか好きになるはずない。あいつの気持ちにも応えられない。それが本来の正しい答えだ。それが当たり前だ。同じ同性を好きになるなんてどうかしているとしか思えない。なのに俺は――。  誰もいない朝の駅のホームで、俺はベンチに座ったまま一人考えた。答えなんて直ぐに出せない。それに今はすごく疲れたし、眠い。もう何も考えたくない。ぼんやりとした頭でそう考えると、自分のジャケットからタバコの箱を取り出して、それを一本口に咥えるとライターに火をつけて吸った。  完全に思考に蓋をすると何も考えずにタバコを吸い続けた。そして、目の前に広がる田園に綺麗な朝日が射していた。空には雀が鳴いて飛んでいた。空気も澄んで清清しい朝だった。  なのに俺はちっとも、清清しい気分じゃなかった。遠くから電車がくる音が聞こえてくるとタバコを地面に落として足で踏みつけて消した。そして重たい体を起こしてベンチから立ち上がった。  遠くの方から電車がくると始発の電車に乗り込んで家に帰宅した。その途中で、最悪の気分で昨日の夜の事を思い出した。あいつに体を好き勝手にやられて、おまけに犯されて写真まで撮られた。もう今になっては怒る気力もどこかに失せていた。ただ今は身体中が痛い。そして、眠い。家に帰ったら直ぐにシャワーを浴びよう。そして、ご飯を食べて寝よ。  電車はゴトゴトと揺れて次第に景色は、のどかな田園の風景から都会の風景へと移った。俺はボンヤリとした頭であいつのことを考えた――。

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