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空白の時間。

 そのあと俺は訳もわからず泣いた。そして、何も考えられなくなると疲れたまま、ベッドの上に倒れ込むように眠ってしまった――。  その日は出勤だったが行くきも失せていた。それに酷く疲れた。一歩も動けない。だから体調不良を理由にその日は会社を休んだ。そして、その次の日も同じ理由で休んだ。  行ったらあいつがいる。それに、どんな顔で会えばいいのかわからない。きっと前見たいには戻れない。あいつも大人なんだ。そんなことぐらい、解っているはずだ――。  俺は自分の気持ちの整理がつかないまま、何も手につかない状態が続いた。そんな時から自然とこのまま会社を辞めようと思いはじめた。もともと俺はそんなに優秀じゃなかった。それに課長にも、期待はされてなかった。きっと俺が、このまま会社を辞めても誰も何も思わないだろう。俺の使っているデスクに空きがあいてそこに新しい奴が入ってきて使うんだろうな。  それに入社して2年目なのに、まだ課長に怒られている。お前の代わりはいくらだっているんだといつも言われたりした。正直言って辛い。死のうかと何度も思ったりした。自分は駄目な奴だと責めたりした。  普通に大学を卒業して、普通にどこかの会社に就職してサラリーマンになって、普通の人生を歩んで、誰かと結婚して、このまま歳をとるんだと思っていた。なのに人生は思うようには行かないな。  どっかで失敗して躓いて怒られて、時には起き上がれないくらいの精神的な辛さを味わって、悔しい思いしてみんな生きてるんだもんな。俺も同じだ。子供の頃に成りたかった夢なんて大人になると大概忘れる。きっと俺が子供の頃に描いていた夢は、こんなハズじゃなかった。もっと明るい未来が見えていた。なのに俺は一体、どこから道を道み外したのだろうか? きっと夢を諦めた時点でそれは只の夢になったのかも知れない…――。 *  会社を休んでから5日目が過ぎた。俺は何もせずに部屋のベランダから外の風景をボンヤリとずっと眺めていた。缶コーヒーを片手にタバコを一本、口に咥て吸った。外の風は心地よかった。何もかも全て優しく包んでくれる。自分の気持ちの整理がつかないまま、これからのことを一人で考えた。  この際、地元の故郷に帰ろうかと思った。もともと両親は俺が東京に行くことを反対していた。地元に帰れば両親は喜ぶだろう。それにここよりかはマシだ。そんなことを思うと急に故郷に帰りたくなった。  まずは会社を辞めてから考えよう。  それから自分がしたいことを見つければいい――。  ベランダから部屋の中に目を向けた。テーブルの上には、さっき書いた退職届が置かれていた。

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