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空白の時間。
もう思い残すことは何もない。それに阿川のことをこれ以上、考えなくて済む…――。
全部は自分のつまらない嫉妬だった。一人であいつに嫉妬して妬んで、そのたびに自分が嫌になって、嫌いになって、何もかもあいつのせいにした。きっと、その付けが回ったんだ。だからもうあいつのことは忘れよう。その方がいい。きっともう二度と、あいつと顔を合わすことはないだろう。
あの日の夜のことは全部、夢だった。俺は悪い夢を見ていたんだ。あいつが俺のことを好きって言ったのも夢で、あいつに抱かれたのも夢だ。あの日は本当は何もなかった。そして、阿川があの駅に一緒にいたのも夢だ。でなきゃ何であいつは次の日、起きたら俺の傍にいなかったんだろう。
俺は男だ。あいつの気持ちには応えられない。
応えられるはずは…――。
「うっ……!」
その瞬間、自分の頬に涙が零れ落ちた。
あの日から情緒不安定だ。
どうして悲しいのかも解らない。
なのに涙が勝手に落ちてくる。
自分の口を押さえると、そのまま涙を流した。
あの日からずっと泣いてばかりだ。きっとこれは、あいつのせいだ。そして、この胸の痛みも全部――。
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