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決意。
あれから色々とじっくり考えた。そして、丸一週間が過ぎた頃、ようやく決意を決めると退職届けを鞄に入れて会社に出勤した。
きっとこの道はもう通らない。毎日、通勤で向かうこの電車にも乗らない。ホントにこれきりだ。今日で何もかも最後にしよう。そして、あいつとも…――。
会社に出勤するとエレベーターの前で自分が配属されている階のボタンを押した。1階から6階に上がる途中で急に息苦しさに襲われてきた。久しぶりの出勤だったから緊張したのかも知れない。
今までこんなに休んだことはなかった。きっと今頃、仲の良い同僚が俺が暫く来ない事で心配しているだろう。俺は今日で辞めるが、あいつらにはちゃんと顔を出しておきたい。
エレベーターが10階に上がると扉が開いた。俺は、深呼吸してから足を一歩前に踏み出した。戸田課長に退職届けを提出したら、自分のデスクを片付けて家に帰ろう。そして、この東京からも――。
並みならぬ覚悟を決めるとエレベーターの出口から一歩を踏み出した。すると突然、誰かにぶつかった。
「あ、葛城っ…!?」
「柏木……!?」
誰かに名前を呼ばれると、ぶつかった鼻を押さえて顔を上げた。すると目の前には同じ部所で同僚の柏木と遭遇した。彼は俺と同じ同期にここへ入社した。最後にコイツの顔を見れただけでも、自分の中では一つケジメがついた。柏木に自分が辞めることを伝えようとした時、向こうから真っ先に話しかけてきた。
「なんだ久しぶりだな。1週間も休んで心配したぞ。お前まさか、どこか悪いのか?」
「ああ、嫌。ちょっとな…――」
「心配したからお前の所に見舞いに行こうとしたんだけど、忙しくてなかなか行けなかった。だから悪いな?」
柏木はそう言って手を合わすと、相変わらず調子の良い言葉を言って謝ってきた。俺はそこで呆れたように笑うと一言文句を言ってやった。
「あっ、そうそう。お前聞いたかよ?」
「何を?」
「いや、ちょっと朝から大変なんだよ。戸田課長がさ…――」
「戸田課長がどうしたんだ?」
俺が何気無く聞き返すと、柏木は少し顔を近づけて耳打ちして話した。
「阿川が今朝、戸田課長に退職届けを出したんだ――!」
『なっ……!?』
その話を聞いた瞬間、全身から血の気が引いた。何でと言葉に出すと驚きを隠せなかった。自分が先に、退職届けを出すはずだったのに、何故かあいつが先に退職届けを出していた。
何でだ阿川!? 一体、何で…――!
あいつが今朝、退職届けを出した話しに衝撃を受けると持っていた鞄を床に落とした。そして、目の前にいる柏木に迷わずにグイッと掴みかかると、取り乱したように慌てて聞き返した。
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