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決意。

  「バカ言うなよ、冗談はよせっ!!」    葛城は気が動転すると、彼の胸ぐらを掴んで慌てて聞き返した。 「いつ…!? それはいつだ!?」 「かっ、葛城…――!?」  柏木は彼に胸元を掴まれると、少し驚いた表情で話した。 「えっと…たぶん、お前がくる15分前くらいか?」 『何っ!?』 「俺も詳しい話しは良く知らないが、何でも戸田課長のオフィスから阿川が出てくるのを見たって奴がいるんだ。それでそいつが中に入ると、戸田課長が取り乱した様子で椅子から倒れていたって…――」  柏木がそう言って話すと、葛城は頭の中がカッとなった。そして、その場で居ても立っても居られなくなった。 「それで戸田課長の机に阿川が出した退職届けが…って、おい!?」  彼が話している最中に葛城はどこかに走り出した。柏木は驚くと後ろから呼び止めた。 「おい葛城、お前どこに!? って言うか鞄――!」  柏木が呼び止めると葛城は自分の鞄を床に落としたまま、どこに走り去って行った。彼の酷く慌てた様子に驚くと落ちている鞄を拾って首を傾げた。  どう言うつもりだ阿川! 俺が退職しようと思った矢先に何でお前が退職するんだ!? しかも俺がくる15分前にだと……!? 「あいつ、阿川! 一体何を考えているつもりだ! 俺よりも優秀なお前が何でここを辞め…――!」  アイツの事で気が動転すると腹が立った。そして、不意に自分の中で思い当たる事があった。そう思うといきなり足が止まった。 「クソッ…!!」  そこで立ち止まると顔を押さえて情けなくたった。そして、あいつのことを思うと、少しずつ自分の中で気持ちが揺れたのがわかった。  バカだ。あいつは大バカだ。そして、俺も…――。  廊下の真ん中で立ち止まると、あいつに対して色々な感情が胸の中に一気に押し寄せた。そして、自分の拳を握ると再びそこから走り出した。営業部に入るとすぐに課長室へと向かおうとした。ズラリと並べられたパソコンには所々に机が並べられていた。そして、空間ごとにパーティションで仕切られていた。大部屋の中を歩いて移動すると奥の部屋が課長室だった。息を切らしてドアを開けると周りの同僚に挨拶をしないまま、課長室に真っ先に向かおうとした。すると途中で誰かに声をかけられた。 「あ、葛城先輩! やっと出勤ですか?」 「すまん萩原、今はお前にかまってる暇はないんだ。あとにしてくれ――」 「冷たいなぁ~葛城先輩は。あっ、そうそう。1週間休んでいた時に何故か阿川が代わりに仕事を片付けてましたよ?」 「何っ…!?」  その話しに足が止まった。萩原はそう話すと机を指差した。確かに俺の机の上には、書類の山が築かれていた。俺が休んでいる間に、7日分の仕事量が溜まっていた。それを目にすると軽く溜め息が漏れた。そしてその置かれた山からクリアファイルを何気なく手に取った。中を見て確認すると、報告書は既に完成した状態だった。そして、他の書類もほぼ完成していた。その事を知ると身体中が震えた。

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