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決意。
他の書類にも目を通すと全部完成していた。それを見るなり言葉を失った。
これを全部あいつが一人で? 何でだ。この仕事は俺の仕事だろ? 何であいつが俺の仕事の分まで…――。
これだけの量を一人でやるのは俺だって音をあげる。なのにあいつはこれを全部一人でやったって言うのか……!?
全身が震えるとファイルを手に持ったまま、愕然と立ち尽くした。するとファイルの間から小さなメモ用紙がヒラリと足下に落ちた。それを拾うと、そこにはアイツの文字が書かれていた。
━━━━“ 全部おわってます ”━━━━
小さなメモにはたった一言の文字が書かれていた。阿川がどう言うつもりで自分の仕事を代わりにやって片付けたのかは解らないが、その文字を読み取る事でアイツの優しさに触れた気がした。
阿川はあんな奴だけど、根はいい奴だ。
なのに、なのに…――。
持っていた小さな紙をギュッと握り締めると、肩を震わせてアイツの事を思った。
「俺もどう言うつもりかは知らないけど、阿川の奴が先輩の仕事を黙々と片付けてたんですよ。やっぱり、あいつ新人の癖にすげーよな。さすが戸田課長に気に入られるだけにある。俺だったら自分の仕事で低一杯ですよ。葛城さんは良いよな、先輩思いの良い後輩を持って。後で阿川に会ったらお礼言っといた方が良いですよ!」
萩原はそう話すとコーヒーカップを片手に、自分のデスクに戻った。持っていた報告書を机の上に戻すと課長室へと向かった。
「失礼します葛城です! 戸田課長に今、大事なお話があります…――!」
課長室をノックもせずに扉を開けると、真っ先に話しかけた。戸田課長は机に肘をついたまま、頭を抱えていた。その机の上には阿川が出した退職届けが置かれていた。それを目にすると自分の心臓がドキッとなった。そして、再び体が怒りで震えた。戸田課長は頭をあげると不機嫌そうに話しかけてきた。
「葛城、朝から騒がしいぞ! 一週間も休んで体調は良くなったのか!? 体調が良くなったなら早く自分の仕事に戻れっ!!」
戸田課長は不機嫌な顔で話すと、自分の机を両手でバンと叩いた。俺は怯むこともなく彼に尋ねた。
「課長、阿川が退職届けを出した話は本当ですか?」
「何? そうだとしてもお前には関係ないだろ!? 有望な人材を失ったのが、そんなに嬉しいのか!?」
「戸田課長っ!!」
彼がそこで声を荒らげると、俺は机に両手をバンとついて面と向かって話し返した。
「たぶんそれは俺のせいです…――!」
『何っ!?』
「詳しくは話せませんが、アイツが退職届けを出した原因は俺にあります!」
『葛城貴様ぁっ!!』
戸田課長はその言葉にカッとなると、俺のネクタイをグイッと掴んで引っ張った。
「貴様、どう言うつもりだっ!? 阿川が辞めたのはお前の責任だと言うのか…―!?」
「そうです! 責任は全部、俺にあります――!」
『なにぃっ!?』
「だから…――!」
俺は戸田課長に面と向かって話すと、思っている事を伝えた。
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