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激情。

「でも安心して下さい、俺はもう二度と貴方の前には現れない。それにあの時に撮った画像は全部削除しました。その方が貴方も安心でしょう。あの夜に繋がるものはもうありません。あとは俺が貴方の前から消えます。そしたら…――」 『阿川、お前っつ!!』  その言葉を口にした瞬間、右の拳でアイツの顔を殴った。感情を剥き出しにして殴ると地面に倒れた。そして、驚いた表情を見せていた。 「ッ…――!」  殴られた拍子で唇を切ると口から血が滲んでいた。そして、呆然とした顔で動かなかった。俺は怒り任せに殴ると高ぶる感情を剥き出しにして見下ろした。 「お前あの時、俺になんて言ったのか忘れたのか? 何もかも奪い去るくらい、お前は俺が好きなんだろ。違うか?」 「えっ…――?」 「あれはお前の口から出たデマカセカか? 俺の事を奪っておいて、お前は逃げる気なのか?」 「葛城さん…――」  アイツは俺の前で動揺すると呆然と見上げた。 「……ガッカリだな。お前にとって俺は、その程度の男だったのか? 人の体を散々オモチャの様に弄んで用がなくなったら自分から消えるのか?」 「葛城さん、俺は……!」 「正直お前がそんな奴だとは思わなかったぞ! 俺の気持ちなんかお構い無しに自分だけ満足すれば終わりなのかよっ!?」  そう言って言い放つと激しく感情を昂らせた。阿川ら立ち上がると俺に触れようとした。 「違います! 俺は葛城さんを…――!」 「触るなっ!!」  アイツの手が体に触れると咄嗟に振り払った。 「俺を思い通りに出来て満足か? 好きだの勝手な事ばかり言って、自分の一方的な思いを言った挙げ句に好き勝手に俺の事をオモチャに出来たんだもんな!?でも、やられた俺の気持ちなんてお前にはわからないだろ…――!!」 「かっ、葛城さん……!」 「お前言ったよな!? 好きって理由があれば、例えそれが間違いだとしても正当化できると! だけど、俺に言わせればあんなのはタダのレイプだ…――! それで事が済んだら今度は俺から黙って離れるつもりだったんだろう!?」  アイツの前で様々な感情が胸の中を押し寄せると、いっぺんに吹き出た。 「俺はお前の一体、なんだ……!? 人をバカにするなよな! 俺はお前にあんな酷い事されてからずっと胸が苦しくて、ずっとずっとお前の事ばかり考えてたんだぞ!? なのに今度は勝手に消える…――!? お前ふざけるなっ!!」  感情を剥き出しにしたまま訴えると、拳でアイツの胸を叩いた。やり場のない想いを全部ぶつけると涙を流した。辛くて耐えられなくなると片方の手で自分の顔を押さえた。そして、涙を隠すように泣いた。何もかもが心の中でグチャグチャになると、自分でも訳がわからずに泣いた。目の前で突然泣かれるとアイツは困った顔で俺の事を見つめてた。そして何も言わずに手を伸ばすと、そっと頭を撫でてきた。

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