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嘘と切なさの間。

「っぅ…! もう勘弁してくれ……! お前の気持ちには応えられない…! 俺にこれ以上、どうしろって言うんだっ!? 俺は男なんか愛せない…! だから直ぐになんて変えられない……! お前みたいに同性を好きになったことなんか一度もないからな……! なのに何でお前は俺を苦しめる!? そんなに俺を苦しめるのが楽しいのか!? 俺は正直お前が怖い! お前の気持ちは俺の心を苦しめるだけだと何故わからないんだっ!!」  かき乱された心を露にすると怒鳴りつけた。自分の中で消化出来ない思いを全部ぶつけると、そのまま地面に両手をついて泣き崩れた。もう自分でも本当は、どうしたらいいのかわからなくなると、アイツの前で体を震わせて泣いた。同性を好きになったことがない俺にとって、阿川の気持ちは真っ直ぐなほど純粋で、俺の心を今まで以上に苦しめた。それと同時に彼に対してその気持ちを受け入れてしまう自分が怖かった。  消化出来ない思いを全部ぶつけると、そのまま肩を震わせて泣き続けた。阿川は口を閉ざしたまま俺の事をジッと見ていた。そして、目の前にしゃがんで来ると話しかけた。 「……もう十分わかりました。貴方が俺をどう思っているのか。本当はまだ気持ちが混乱しちゃってるんですよね? 確かに俺は同性しか愛せないです。だけど貴方は違う――。だから俺みたいな奴にいきなり好きだって言われて自分の中で気持ちがグチャグチャになったんですよね?」 「ッ……!」 「葛城さんごめんなさい、貴方を沢山苦しめて。俺の気持ちは貴方にとっては迷惑なだけかも知れませんね。だけど俺は貴方が好きです。この気持ちだけは、本当です…――!」  泣いている俺の肩に両手を置くと、まっ直ぐな瞳でジッと見つめてきた。その言葉にハッとなると、顔を上げてアイツの瞳を見つめ返した。 「葛城さんこれだけは聞かせて下さい。貴方は、俺のことが嫌いですか?」 「あっ、阿川…――!」 「俺が嫌いですか?」 「ッ……」  いきなりその事を質問されると、自分の唇を噛んで顔をうつ向かせた。 「……俺は最初は、お前が嫌いだった。でも今は嫌いじゃない。嫌いじゃないけど突然過ぎて好きとかそう言った気持ちがよくわからないんだ。同性から告白されたのは初めてだったから…――。お前の気持ちを受け入れるのが本当は俺は怖いんだ。それにその気持ちを受け入れたら自分じゃなくなってしまうのが余計に怖い…――!」 「葛城さん……」

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