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嘘と切なさの間。

 阿川は葛城の口から本当の気持ちを聞かされると、それでも好きだと想いを伝えた。 「――葛城さん、俺は貴方が好きです。好きでしょうがないくらい貴方が大好きです……!」 「阿川…――!」  再び彼に告白されると、少しずつ自分の中で気持ちが揺れたのを感じた。 「何を言ってるんだ。俺はお前の気持ちには応えられ――」  そう言って言い返そうとすると彼の瞳の奥には自分しか映っていなかった。熱のこもった強い眼差しで、見つめられると心臓が高鳴った。それと同時にその瞳の奥に吸い込まれそうな気がした。 「葛城さん。もしかしたら、キスしたら何か解るかも知れませんよ?」 「えっ…?」 「最後に貴方を抱き締めてキスしてもいいですか?」 「あっ、阿川…――!」 「貴方に触れるのは多分、これが最後になると思いますし。だから最後にもう一度触れさせて下さい」  その言葉に身体が反応すると、そのまま下を俯いて顔を赤くさせた。 「好きにしろ…――!」 「ありがとうございます……!」  俺の事をぎゅっと抱き締めてくると、壊れ物を扱うようにソッとキスをした。その切ない口づけは初めて感じるよう淡いときめきだった。あの夜、強引にキスされた時よりも優しく。そして、胸がぎゅっと締め付けられた。そのキスに初めて感じた気がした。 「ンッ……」 「葛城さん…――」 「阿川…――」  近くで名前を呼ばれると急に身体中が熱くなった。そして、気がついたら自分の腕を彼の背中にまわして抱き締め返した。 「葛城さん、貴方が大好きです……!」  阿川は最後に自分の想いを口にすると、抱き締めた腕をソッとほどいた。その瞬間、彼の腕の中から解放されるとただ胸の奥が切なくなった――。

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