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揺れる想い。

  「――いいんですか葛城さん。俺は貴方が好きなんですよ? そんな男が貴方の傍にいたら、迷惑じゃないですか?」 「ッ……!」 「……俺はお前の気持ちには応えられないと言った。けど、これからは頑張ってお前の事を理解する努力はする。それでもダメなのか…――?」  アイツの質問に自分の気持ちがハッキリしないままだったが、向き合う努力をすると自分なりに伝えた。阿川はフと溜め息をつくと足を一歩前に踏み出した。 「葛城さんそれって正直よくわかりません。でも貴方がそういうなら、俺は貴方に宙ぶらりんな恋でもいいからしてみようと思います…――」  その言葉に自分の下唇を噛むと、もどかしい表情をみせた。好きか嫌いかもわからない中で、そう言ってアイツを引き留めた自分にもどかしさを感じた。  俺は卑怯だ……  本当はハッキリとしなくちゃいけないのに  俺はあいつに甘えてる……  狡くて卑怯なのは、きっと俺の方だ――。  自分の気持ちが昂ると涙が流れた。阿川は、そんなもどかしい俺の気持ちを理解すると、スッと指先で涙を拭った。 「じゃあ、ちょっとは俺のこと受け入れてくれる気持ちがあるって思ってもいいんですか? 葛城さんは、俺のこと考えてくれるんですよね――?」  アイツは最後にそう言って聞き返してくると、涙を流しながら声を震わせて返事をした。 「おっ、俺は直ぐには答えは出せないぞ…――!? そ、それにお前の事好きか嫌いかもまだよくわかってないんだ。こんなハッキリしない気持ちでお前を引き留めるのも自分でもどうかしているが、だけどお前が俺の前から居なくなるのは…――!」  自分でも情けなくなると、片手で顔を隠して溢れる涙を堪えた。 「葛城さんって恋愛に不器用な人なんですね。でも、そこが可愛いです。そんな風に泣かれるとまた貴方を抱き締めたくなるじゃないですか――?」  そう言ってアイツは俺の前で優しく笑うと、明るく話してきた。 「よし、じゃあ一歩前進ですね?」 「阿川……?」 「俺こう見えても追いかけられる方より、追いかける方が好きなんです。遠回りかも知れませんけど、でもいつか好きって思われるような男になって、その時は貴方にちゃんとした気持ちを聞かせて欲しいです――!」 「お前……!」 「俺、葛城さんに好きって言ってもらえるように努力しますから、その時は逃げないで下さいね?」  阿川は俺の複雑な気持ちを理解した上で、前向きに話してきた。そんなアイツのひた向きな想いに自分の心は揺れた。 「――でも、葛城さん。俺、戸田課長に退職届けを出してしまったので、きっともう手遅れかと思いま…」 「ん? ああ、これのことか?」 『えっ…!?』  その瞬間、アイツは驚いた表情を見せた。何故なら手には阿川が出した退職届けがあった。俺は着ているジャケットからそれを取り出すと彼に見せた。 「なっ、何で葛城さんがそれを持っているんですか…――!?」  阿川はそう言って話すと動揺していた。彼に退職届けを見せると事情を説明した。 「そんなの決まっているだろ…! 戸田課長にお前を連れ戻せと言われたんだ! でも、あいつに言われたから連れ戻しに来たんじゃないからな!? これは、俺の意思だ…――!」 「えっ…――?」

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