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その時、彼は――(葛城side)

――阿川が退職届けを出したのは自分のせいだと訴えると、彼は自ら地面に向かって両手をついて土下座をした。戸田課長は自分の目の前で彼に土下座をされるとそこで驚いた表情をみせた。  決して人前で土下座なんかしないような男が、その時ばかりは自分のプライドを脱ぎ捨てて、ひたすら謝って土下座した。自分の目の前で頭を下げられると戸田課長はそれ以上、彼に追及はできなかった。 「戸田課長、お願いがあります……! どうかアイツの出した退職届けを取りやめて貰えませんでしょうか――!?」 「なっ、何……!?」 「自分のせいでアイツがここを辞めなくてはいけなくなったのは、私の責任にあります!!」 「葛城…――!?」  戸田課長は彼にそう言われると少し動揺していた。そして、彼の真剣な眼差しに圧倒された。 「だがな葛城。一度退職届けを出した人間が、そんな簡単に戻って来ると思うのか? ましてやそんなのは辞めた人間の意思の問題だ。お前が取り消して欲しいと私に言ってもな…――」  その言葉に彼は、真剣な目で応えた。 「俺がアイツを連れ戻します! 阿川は自分が責任をもって連れ戻しますから、どうか彼が出した退職届けを取り消して下さい! どうかお願いしますっ!!」  切実に訴えると再び彼の前で頭を下げた。プライドの塊みたいな男が、同僚の為に必死で頭を下げている姿に戸田課長は心を動かされた。そして、見兼ねると一言頭を上げろと声をかけた。

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