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その時、彼は――(阿川side)
そう思うと急に胸が切なくて哀しくなった。自分のせいで彼が辞めるようになったのなら、俺はそれに耐えられない。それに彼が辞めて自分が逆にいる様なそんなことにはなりたくないと思った。
もし彼が辞めるような事になったなら、自分が先に辞める。それくらいの覚悟があった。自分のせいで、彼の人生までも狂わしたらいけない。
もし消えるなら俺の方だ。
俺の存在は彼を苦しめるだけだと解っていた。
どんなに好きでも、彼にあんな酷いことした。
そんな奴が彼に会う資格なんて絶対にない――。
ベッドの脇に置いていた写真たてを手に取った。ずっと前に、会社の社員旅行で皆と撮った写真。
あれは4月の桜の時期だった。皆と撮った写真の中で俺と彼が写ってる写真はこの1枚しかない。なのにこの1枚だけの写真が俺の中では一番の宝物だった。
「葛城さん……」
彼のことを想うと胸が切ない。そして、それと同時に心が苦しい。そんな時に、彼に恋してるいることに気づかされる――。
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