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その時、彼は――(阿川side)

 デスクの前で深いため息をつくと、再び手にペンを握り締めた。毎日、徹夜と残業で彼の仕事を代わりにやったら何とか無事に終わった。あとは葛城さんが、来てくれれば問題はなかった。 ……いや、彼が来てくれたら嬉しい気持ちとは半面。やっぱり怖い。  彼の口から嫌いと言われたらさすがに立ち直れそうにもない。それに本当に来てくれるのか不安だった。 もしかしたら本当にこのまま……なんて、また弱気なことが頭の中に過った。最後の仕事を終えると、俺は小さな紙に何て書こうか考えた。デスクの上を指先でトントンと音を立てながら考えると、頭の中で書いた手紙をくしゃくしゃに丸めて捨てた。 ――ここはやっぱり"ごめんなさい"と書くべきか? それとも"貴方の分も仕事やっておきました"って書くべきか? ……いや、どっちもやめとこう。ごめんなさいだったら謝るくらいなら最初からするなって逆に怒られそうだし……。"やっておきました"なら、単に恩着せがましい奴だよな。  ああ、こんな時に言葉が上手く浮かばない。  俺ってセンスないな。  こんな時、何て書けばいいんだろう…ーー?  自分のデスクの前で頬杖をついて考えた。だけど、なかなか思い浮かばない。小さな紙に書くのはたった一言のメッセージだった。なのにその言葉が何だか、今は重い。

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