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短編2〜内緒のコレクション〜
「あ、すまん…! もう一度作り直す!」
「いいですよ、大丈夫です。それに髪の毛は、取れば問題ないです。せっかく貴方に作ってもらったのにもったい無いですし――」
そう言ってニコっと笑うと、ラーメンの麺を啜って美味しく食べた。葛城さんは「そうか」と言って安心した様子でラーメンを食べた。俺は、違う意味で美味しさを感じていた。
――ああ、隠し味が効いてると美味しいな。葛城さんの細胞エキス。葛城エキス。これって俺のこと誘ってる?
ラーメンの汁を啜りながら彼の事を見ると、そこでイケない妄想が膨らんだ。なんか食べてる姿とかエロいよな。
「ん? どうした?」
「あ、いえ。何でも…――!」
「ふーん。そうか」
「それにしても格別に美味しいですね。この汁 。隠し味が効いてますよ」
「隠し味? お前、何言ってるんだ? スープは市販のだって言ってるだろ?」
「きっと隠し味は貴方の愛情ですね。愛情がこもった料理は、何でも美味しく感じますよ!」
「ッ…―!」
「お前なぁ、イチイチ大袈裟なんだよ…――!」
葛城さんは顔が少し赤くなると、照れた様子で急に怒った。「さっさと食え!」と言って急かす様子が、何だか可愛いく見えてきた。
「そんな事ないですよ。好き人が作る手料理は、どんなものでも美味しいですよ!」
「バカっ……! 聞いてるこっちが恥ずかしくなる。昼間からノロケるのもほどほどにしろよ!」
「は~い!」
彼は椅子から立ち上がると、食べた食器をキッチンに運んで片付けた。ラーメンを食べ終わると、彼に話しかけた。
「今日は天気がいいから、二人でどこか行きましょうか?」
「ああ、別にいいぞ。仕事も片付いてるし買い物でも行くか?」
「映画館はどうですか? 今面白いのがやってます」
「別に構わないぞ。じゃあ、映画で決まりだな」
「はい!」
「じゃあ、出かける前にシャワー浴びてくる」
「どうぞ! あ、片付けは俺がするので、そのままにしておいて下さい」
「そうか? じゃあ頼んだ!」
そう言って彼はシャワーを浴びに行った。俺は彼が居なくなったのを見計らって、さっき手に入れた彼の髪の毛を持って自分の部屋に行った。そして本棚からファイルを取り出した。透明なビニールに彼の髪の毛を入れるとそれに日付を書いてコッソリ納めた。赤いファイルの名前には「葛城さんコレクション」と書いてある。これが俺の密かな趣味だった。そんな密かな趣味を彼は知らない――。
END
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