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短編4〜彼との幸せな瞬間。
――その日の夜サッカーの試合を観る為、急いで家に帰った。玄関を開けて「ただいま帰りました~!」と大きな声で話しかけると、ネクタイを緩めてリビングに直行した。部屋のドアを開けると葛城さんが夕食の用意をしていた。
「あ、お帰り阿川。夜飯食べて来たか?」
「いえ、まだ食べてません! あ、ビール飲んで良いですか?」
「その前に風呂入って来い。あと少しで料理が出来るから先に入って来いよ」
「は~い♪ じゃあ、お風呂行ってきます!」
「ああ」
葛城さんはキッチンの前で炒め物をしながらご飯を作っていた。エプロン姿でキッチンに立ってる姿が、何だか奥さんって感じだった。その姿に思わず顔が緩んだ。
「――やっぱ可愛いなぁ、葛城さん」
「ん? なんか言ったか?」
「いえ! 何でも……!」
慌てて話を反らすとお風呂に直行した。そして、体を洗ってシャワーを浴びて、湯船に浸かって出た頃には食事が出来ていた。お風呂から出てリビングに戻ると葛城さんがテレビを観ながら待っててくれた。
「ちょうど今出来た頃だ。食べるか?」
「ええ、食べましょう! 俺もお腹ペコペコです! 葛城さん今日は何ですか?」
「今日は豚と茄子の胡麻味噌炒めとポテトサラダと、手羽先の塩焼きと味噌汁だ」
「良いですね♪ 俺、ポテトサラダ好きです!」
「そうなのか?」
「ハイ!」
冷蔵庫から冷えた缶ビールを両手に持つと、それを1つ彼に手渡して席に座った。そして、二人で夕飯を食べながら今日の1日の出来事を話した。葛城さんは俺の話を聞きながら相づちをすると黙々とご飯を食べていた。ポテトサラダを一口食べると「美味しい!」と素直に褒めた。彼は照れた様子で顔を反らすと、顔が少し赤くなっていた。
「ふん、当たり前だ……! 俺が作ったんだからな。そこら辺のスーパーで売ってるようなポテトサラダと一緒にするな…――!」
「も~葛城さんは素直じゃないなぁ。でも、照れ隠しする処が何だか可愛いですね?」
「だっ、誰が照れてるだ!? 誰が…――!」
「フフフッ。貴方が作ったポテトサラダから、愛情を感じます」
『ぶはっ!!』
葛城さんは目の前で味噌汁を吹き出すと、顔を赤くしながら怒ってきた。
「お前イチイチ変な事言ってくるんじゃねーよ!! 聞きいてるこっちが恥ずかしくなる! 食べて最中にいきなり惚気るなっ!!」
「え~? ノロケてなんか無いですよ。本当の事を言っただけです。貴方の作った手料理は、俺にとって世界一美味しいです!」
「ッ…良かったな、世界一美味しい料理を食べれて」
「はい!」
彼は照れた顔で箸を止めると、恥ずかしそうに下を俯いた。そんな彼の可愛い仕草に何だな胸がキュンとなった。葛城さんは普段はツンだけど、デレると急に可愛くなる。そのギャップに、俺はますます夢中になった。良い感じのムードになるとそこでサッカーの試合が始まった。テレビの音にハッとなると、そこでご飯を食べながら試合を観戦した。
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