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彼女をつれて、車を停めていた近くの駐車場まで行った。彼女が車に乗るのを助ける。かなり痛むようだった。
東城は、広瀬に電話をかけた。何コールか後に彼がでた。
「今どこにいる?」
「東城さんの家に来てます。どうかしましたか?」東城の緊張を察したのだろう。声が少しだけ心配している。その彼の声を聞いて、東城は逆に安心した。やや気持ちが落ち着く。
「今から帰るんだが、人を連れて行く」
「わかりました。俺、家を出てたほうがいいですか?」
東城は、あやめを見た。彼女は目をとじている。顔色が悪い。
「いや、そこにいてくれ。怪我している女性なんだ。薬箱をだしておいてほしい。それと、着替えにできそうなものとか」今いる場所とだいたい家につきそうな時間を教えた。
広瀬は了解した。
電話を切ると車をすぐに出した。あやめがこちらをむいて、手をみているのがわかる。左手の薬指を確かめているのだ。
「結婚してらしたの?」
「いえ」
「彼女がいるの?」あやめが微笑んでいる。「私が急に行くっていったら、怒ってるんじゃないかしら」
「それはないですよ」
「そうかしら。彼女にきちんと説明してくださいね。安心させてあげないと、私が原因で仲が悪くなったら申し訳ないわ」
東城は、そうですね、一応と答えておいた。
家が近づいてきたので、東城は言った。「先に行っておきますけど、広瀬は、今、家にいるのは男ですから」あらかじめ言っておけば、広瀬も気まずい思いをしないだろう。それにあやめは、東城の家に男がいると聞いても動じなさそうだ。
「あら。そうでしたの」あやめはうなずく。そして申し訳なさそうな顔をした。「ゲイでしたの?そうは見えなかったわ。ごめんなさいね、前に変なこと言ってさそったりして」
「いえ、気にしないでください」
あやめは、東城を見ている。「女性とも付き合うんでしょう?バイセクシャルなのね」
「そうかもしれませんね。深く考えたことないですけど」
「今、家にいる方を愛してらっしゃるのね」とあやめが言った。「うらやましいわ。私がお店で誘ったなんていわないでくださいね」
「あ、それはもう話しました。かなり、インパクトが強い体験だったので」
あやめはかすかに笑った。笑うと痛むようだった。
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