上司の高田が二人を待っていた。簡単にその日のことを報告した。 高田はうなずきながら話を聞いた。「かなり現場は絞れそうだな」と彼は言った。 「これから会議がある。遺体の身元がわかった。それに関係してお客さんたちがきてる」そして、「今の話は、後で課長に報告するから、今日は黙ってろ」と言われた。 やっかいな客が来たのだろう、と想像できた。 会議室には、大井戸署の課長と数人の捜査員が既に入っている。 宮田は君塚の隣に座った。広瀬もその隣に座る。 「お客さんって？」と宮田が君塚に小さい声で聞いていた。 「あちらにいる人たちです」と君塚は宮田にひそひそ声で答えた。 見ると、課長が座っている正面の長机とわずかに離してもう一つ長机があり、そこに男が２人座っていた。 １人は、５０代半ばだろうか、髪の半分くらいが白髪で、背は高くないががっちりしている。 厳しそうな性格が顔にでている。会議室の中をじろじろと見回しているかと思うと、急に課長に話しかけたりしている。課長は明らかに迷惑そうな顔をしていた。知り合いなのかもしれない。そうかと思うと、立って、椅子の位置を直している。落ち着きがない。 もう１人を見て、広瀬は、どこかで見た顔だ、と思った。長身で細身。すっきりとした目元の若い男だ。５０代の男の部下なのだろう、時々何かを言われて答えている。 「なあ、あいつ、前見たことがある」と宮田が言った。「誰だっけ」そして広瀬に聞いてきた。「お前のタブレットに入ってない？」 言われて広瀬はタブレットを開く。写真を推定年齢順に並べてみるが、該当しそうな層の中にはない。 「どこだろう。うーん」宮田はタブレットにないことを確認し、首をひねる。そして、あ、と言った。「あいつだ。ほら、東城さんと一緒にいた奴」 そう言われて広瀬も思い出した。ずいぶん前、まだ、東城が大井戸署にいたときに二人が車の中で話をしていたのを見たのだ。本庁に戻るかどうかを打診しに来たのだ、と後で東城には教えられた。彼はすぐには返事をしなかったが、しばらくして戻ると返事をしたのだ。 そこまで思い出したところで、会議がはじまった。