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峯尾が店を出た後、竜崎が東城に質問してきた。
「大井戸署の広瀬って知っているのか?」
東城はうなずく。「まあ、同じ部署だったから」避けたい話題だったのであいまいに返事をした。
ところが、竜崎は東城が全く予期しない質問をしてきた。
「彼の、父親のことは聞いたことがあるか?広瀬信隆という名前だ」
「いや、父親?」
竜崎は、大井戸署で福岡が急に広瀬に詰問した話をした。
「福岡さん、反省はしてたが、今度は僕が気になって。広瀬信隆という名前を調べてみたんだが、今のところ誰かわからないんだ。大井戸署でなにか話が出たことはないのか?」
東城は首を横にふった。広瀬の父親のことなんて今まで聞いたことがなかった。
「広瀬は福岡さんになにか言ってたのか?」
「平静だったよ。無表情で」
無表情は広瀬のデフォルトだから平静なのかどうかは話だけでは判断しにくい。
この前会ったときも広瀬は何も言っていなかった。
そういえば広瀬の家族の話ってほとんど聞いた事がない。どこの出身なのかや両親は今何をしているのかとか、話したことがなかった。質問をしたこともなかった。
「気にしすぎかもしれない」と竜崎は言っていた。「この前、お昼一緒に食べたんだよ。その、広瀬ともう1人、メガネかけてた、宮田っていうのと。福岡さんが悪かったって謝ったんだけど、その時も無表情だった。たいしたことじゃないのかもしれない」
このときはそれで話は終わりだった。東城もそれほど気にかけはしなかった。
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