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東城は竜崎と一緒に峯尾と佳代ちゃんに教えてもらった矢後という男を探していた。 夜に彼がよく行くといわれている店を何軒か訪ねてみたが、最近見ないという話ばかりだった。この手の店の事情に詳しい人間と一緒に来ないと、簡単には教えてもらえないのかもしれないと思い始めていた。 ふと、東城は、内ポケットに入れた自分の個人のスマホに連絡が入っているのに気づいた。珍しく、広瀬からだった。 着信があり、その後しばらくしてからメールも入っている。ずいぶん前の時間だ。 メールをあけて、スマホを取り落としそうになった。 「どうした?」と竜崎が聞いてきた。 「いや、ちょっと」気を取り直して何度か文面を見る。 東城のマンションにあやめとれいあが来たこと。USBメモリーをとりに違法なSMクラブに行くことが簡潔にかかれてあった。簡潔すぎて、なんでそのようなことを一人でしようという気持ちに至ったのかさっぱりわからない。 だが、広瀬はその店が黙打会の幹部の児玉が関係しているとは知らないのだと思い出した。 彼からしたら、違法営業しているSMクラブで、その程度の店はよくある。東城だって黙打会関係でなければこんなに気にはしなかっただろう。 東城は、スマホをポケットにおさめた。「悪い。まずいことがおこってる」そういった。「今日は、帰る。続きは明日」 「なんだ?どうしたんだ?」と竜崎は怪訝そうだ。 東城はためらった。何をどこまで言うべきか。だが、今回の事件に関係がありすぎることだ。 「広瀬って知ってるだろ。大井戸署の」と言った。 「ああ」竜崎はうなずく。 「背景とか説明する時間はないんだが」と言いながら東城は手短に説明をした。広瀬のメールに書いてあったことをそのままいうくらいの短さだ。 竜崎はわけがわからないという顔をしている。 「児玉のSMクラブを見に行く。なにもないとは思うが、気になるから」と東城は言った。 「自分も行く。1人でいくのは危険だ」 彼は東城に質問はしてこなかった。聞きたいことは山ほどあるのだろうが、いつも冷静な彼は、今は、まず、SMクラブに行って状況を把握し、その後、あやめとれいあを保護することを考えるべきだと判断したのだろう。 二人でSMクラブにむかった。 ところが予期しないことがおこっていた。店の前で何人かが野次馬のように覗き込んでいたのだ。入り口の黒いドアは半分はずれている。 「どうしましたか?」と野次馬の男に背後から聞いた。彼は振り返り、ひそひそ声で答えた。 「カチコミがあったみたいなんだ。ここヤクザが経営してるんだよ。ついさっき、黒ずくめの男たちが何人かで入ってきて、暴れて壊して、すぐに帰っていったんだ」 東城は野次馬の脇を通って中に入った。竜崎も後ろから来る。 中はひどい様子だった。受付付近のソファーや机、長い脚のライトはなぎ倒され、花瓶は割られ、受付カウンターのものは叩き壊されていた。

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