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児玉はしばらく黙っていた。そして、いやな目つきで東城をみた。 「なあ」と児玉は聞く。「どこに連れ去ったのか知りたいのか?だったら、今度は俺の質問に答えてくれるか?」 「質問内容による」と竜崎が言った。 「運河であがった、近藤って男の件、知っているか?」と質問された。 「この店の客だったそうじゃないか」 「そうだ。犯人はわかったのか?」 「それは回答できない」と竜崎が答える。 「ということはまだわかっていないんだな。近藤がこの店でやばい写真を撮られて、そのネタで脅されてたって話しを聞いたが、それは本当なのか?」 「本当だ。あなたは脅した本人だろう?どうしてそんなことをきくんだ?」 「おいおい、俺はそんなことはしていない。何で、店のお客さまを脅すんだ。そんなことしたら、信用なくなってこの店も商売できなくなるだろう」と児玉が心外だという表情をした。 「誰が、脅しをしたんだ?」と聞いてくる。 竜崎は黙った。児玉をじっとみている。 「俺だと思ってたのか。なるほど」と児玉は言う。「それじゃあ、いつまでたっても犯人も捕まえられそうにないな」 「この店で撮影された写真で近藤は脅されていた。写真はどうやって撮影されたんだ?」 「知らないな」 「プレイルームにカメラは?」 「女の子と客だけになるから何かあったときのためにつけてはある。だが、セキュリティは万全だ。絶対外部には取り出せないようになっている」 「ずいぶんな自信だな。セキュリティの専門家をやとったのか?」 児玉は弟に言った。「おい、カメラ映像見られる部屋はどうなってる?そこも奴らにやられてるのか?」 「ああ」と弟はうなずいた。「モニターは全部こなごなだ」 「勢田のやろう」と児玉はつぶやいた。そして立ち上がる。「モニタールームは奥だ。映像はそこに入るだけだ」 児玉が歩いていく先に東城と竜崎はついていった。 ぐちゃぐちゃに壊された部屋を見回し、児玉は説明する。 「仕組みは単純で、部屋にカメラとこっちにモニターがあるだけだ。ネットにも何もつながってないから、流出しようがない。記録はとるが、6時間ごとに上書きされる」 ハードディスクも壊れて落ちている。東城はその箱の側面を見た。「オールシステムという会社がいれたのか?」と児玉に聞いた。 児玉もその箱を覗き込む。「ああ、そうだ。そんなような名前だった。近所の店に紹介されたんだ。この辺、この会社の仕組みいれてるところは多いはずだ」そしてハードディスクを指差す。「外に持ち出そうとしても、外部に接続する端子がないからできないんだ」そういった自分で苦笑した。「これはこのシステム会社の触れこみだ」 児玉は東城に聞いてくる。「連れ去られた男というのは、あんたたちのお仲間か?」 「さあな」と東城は言った。 「勢田が、動いたのは、この店のなにに関心があったんだ?」とさらに聞かれた。 東城は首を横に振る。「わからない」 「あんたたちは、そもそも何でこの店に来たんだ?連れ去られた男を探しに来たのか?」 「そうだ」と東城は正直に言った。「質問に答えたから、そろそろ連れ去った先の心当たりを教えてもらおうか」 「今んところほとんどあんたたちからは何の回答ももらってないがな。でも、まあ、いい。教えてやるよ」児玉は、スマホをとりだし東城に見せた。「勢田の住所だ。やつは5箇所くらい住所があるらしいが、お客さんを連れ込むならここだろう」そして聞いてくる。「だけど、行ってどうするつもりだ?あんたたちが押しかけて男を連れ去っただろうと質問しても、あっさりそうですって言って答える相手じゃないぜ」 東城は住所を記録した。「考える。児玉さんに聞いてここにきたというと効果的かもしれないな」 児玉は笑った。「それはいいな。勢田が俺の名前を聞いてどうでたのかは、後で教えてくれ」 東城は、急ぎ足で店を出た。まだ外は暗い。 竜崎も追ってくる。「どうするつもりだ?」と聞かれた。 「勢田のところに行く」と答えた。それ以外考えられなかった。「勢田は、広瀬のことになると頭がおかしいんだ。何をするかわからない」 車に乗り込むと竜崎も入ってくる。「これは今回の近藤の事件とは無関係の可能性がある。来なくてもいいぞ」と竜崎に告げた。 「そうだとしても、黙打会の幹部のところに1人で行くのはありえないだろう」と竜崎は言った。

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