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広瀬は、車に連れ込まれるとすぐに抵抗を封じ込めるために手を後ろに縛られた。 さらに、黒い布で目隠しもされた。大声をあげて足を蹴り上げ暴れると、数人で抑え込まれ、口の中にも布を入れられた。吐きそうになるのを必死でこらえた。吐いたら、喉に逆流して死ぬだろう。 車は数十分程度移動していた。深夜のため交通量が少ないことから考えると、拉致された店からはかなりの距離は走っている。 駐車場に停まった音がした。 車から乱暴に引きずり出される。外に出た瞬間に体当たりをして逃げようとしたが、縛られた腕をねじげられた。痛みで身体が反射的に動きを止めてしまう。 「細い身体で、抵抗すんじゃねえよ」 乱暴な声は若い男のものだ。身体はかなり大きそうだ。 何も見えないので躓きそうになるのを背中から小突かれて歩かされる。靴を脱がされ、空調のきいた場所に入ったので、そこが居住する家だとわかった。目隠しされているが、灯りがついているらしいことはわかる。 階段や長い廊下の先でとまった。 そこでやっと口から布を取り出された。部屋のようだ。 「悲鳴でもあげてろ。誰も来やしないからな」別な男の声だ。敵意は、先ほどの若い男と一緒だ。 部屋には、何人いるのだろうか。気配からは少なくとも四人はいる。 手を振りほどこうと身体を揺さぶる。体当たりをしようとしたが、当然避けられる。 「面倒な奴だな」 「抑えてろ」 ぐっと、後ろから身体をつかまれる。 前から手が襟元に触れる。 シャツのボタンをはずされた。あっというまに前が開けられる。さらに、ピッという音がして、布が裂かれた。後ずさりしようとしたが、動けない。 「やめろ!」 静止の声をあげた。もちろん、聞く相手ではない。 ベルトにも手がかけられる。 「俺は、逮捕されたことあるんだよ。拘留されてな、あの時、サツの前で裸にされて、検査とか抜かして、ケツの穴まで見られた。ああやって、抵抗する気をなくさせんだよな。いい仕組みだよ。お前もサツなら、よく知ってんだろ」 男がそう言いながら、広瀬のベルトを抜き、ズボンをおろした。 広瀬は、後ろに体重をかけて足を浮かし、見えない相手を蹴った。男は、避けきることができずわずかにあたった。 「てめえ」 怒った男が広瀬を横に突き飛ばした。床に、倒れると思ったが、そこは、ベッドの上だった。 手が両足をおさえつける。 「はなせ」 無理だとわかりながら、バタバタと足を動かそうとした。 だが、下着を足から抜き去られる。 「あ!」悲鳴に近い声をあげてしまった。

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