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朝はまだ早く、福岡チームの事務所には人気はなかった。竜崎は事務所につくとすぐにIT関連の部署の人間を呼び出し、USBメモリーの解析を依頼した。
福岡がやってきた。彼は、誰よりも早くでてくるのだ。
東城と竜崎のあいさつに返事をしている。「徹夜したのか?」と聞いてきた。
竜崎が「はい」と答えている。
福岡は、東城の近くで、椅子にポツンと座っている広瀬に気づいた。彼は、大げさに驚いた身振りをする。
「どうしてここにいるんだ?」と聞かれた。
東城は、手短に福岡に説明した。れいあの話、児玉のSM店にUSBメモリーがあったこと、広瀬が勢田に拉致されたのでとりもどしたこと。話自体は真実だが、細部がかけているため不思議な部分は多かったはずだ。だが、福岡は特につっこんではこなかった。
「で、そのSM嬢たちは今お前のマンションにいるのか?」と聞かれた。
「はい」
「うらやましくなんかないけどな」とわけのわからないことを呟いている。
しばらくするとUSBメモリーを開いたノートPCを持って担当者がやってきた。
「データは色々あるけど大半は日記みたいなものだったよ」と言う。見せてくれたそれは確かに文字と写真のワードファイルだった。どうやら近藤は自分をはめた組織を調べていたようだ。その記録が日記のように記載されている。
福岡がPCの画面を後ろから覗き込んでいる。
担当者は、しばらくスクロールしていたが同じようなファイルのため一旦閉じた。
「それよりも、こちらの方が重要だと思います」そういった、別なファイルをあけて福岡に見せた。
「なんだこれは。文字化けか?」
「いいえ。パスワードだと思います。かなりの桁数です」
福岡は竜崎と東城に解説を求めるような視線を送る。
「れいあを脅してこのUSBメモリーを持ってこさせようとしているのは、このパスワードを知りたいからではないでしょうか」と東城が福岡に言った。
「なんのパスワードだ?」
「さあ。それはこの日記を読めばわかるかもしれませんが」
福岡はじっとファイルをみていた。そして東城に言った。
「おい、まず、このぼうやを大井戸署に行かせろ」彼は広瀬を示した。「ここにいるとわかったら面倒だ。前に、このぼうやにちらっと話しかけたんだが、あっちの課長からうちの刑事に関わるなって怒られたんだ。それも、文書で通達してきやがった。あいつは昔から短気で困るよ。だから、さっさとここから出してしまえ。ぼうやも大井戸署には俺の迷惑になるようなことを報告するなよ」
そう一方的に言った。
東城は、「はい」と返事をした。広瀬は急に話しかけられて口を開くのに時間がかかる。その間にも福岡は話を続けている。彼はノートPCを操作していた担当者に言う。
「そのファイルのコピーを作ってこのぼうやに渡せ。ぼうやもヤクザに捕まって怖い思いをしている。手ぶらじゃ気の毒だからな。このまだるっこしい文章の日記も大井戸署の連中なら喜んで読むだろう」
担当者は同意している。
そして、再び東城に言う。
「それから、お前の家にいるSM嬢さんたちを保護する。準備をするから、迎えが行くまでお前は自分の家にいろ。SM嬢さんたちを外に出すんじゃないぞ」
そして返事も聞かずに手振りで急ぐように東城に示し、せかせかとどこかに電話をかけはじめた。
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