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生まれも育ちも 2
東城の指が広瀬の身体中に触れてきた。
そのやり方はほとんど触れるか触れないかのぎりぎりくらいで、愛撫とも違う。最初のうちは、どこもここもくすぐったく、広瀬は指を避けた。
そのたびに東城が、「動いちゃだめだって言ったろう」と耳の奥に声を入れてきた。
押さえつけられるでもなく、自分の意思で動かないよう我慢するのだ。
本当は、こんな遊びに付き合う義務などなかったはずなのに、広瀬は、魔法にかかったように東城の言葉に従っていた。
動きたい、彼の指から身体を避けたい。そうでなければ、いつも通りもっと強くとねだりたい。
でも、少しでも声を出すと、東城が指を広瀬の唇にあてて、子供にするように、しーっと言ってくるのだ。
彼が寝室を少し明るくしたのがまぶたごしにわかった。じっくりと、動けない広瀬を目で見ているのだ。
それから、東城の指が、広瀬の足のつま先をたどった。全ての意識は東城の指に集中している。指は右足の裏、かかと、くるぶしをたどる。ひざまであがりまた、つま先にもどっていく。行きつ戻りつしながら太ももまでやってくる。
広瀬は、自分が右足だけの存在になってしまったような気持ちになる。どれくらい長い時間そうされていたのか。
右足の次は左足だ。それから足のつけ根、腹へと、彼の指は動いていく。広瀬は見なくてもどの手のどの指が触れているのかわかるようになる。自分の左ひざをなでる指は東城の右手の中指だ。太ももをなぞってくるのは、左手の人差し指だ。少し皮膚が固く感触が荒い。
くすぐったかったはずのその感触が、次第に熱くなり、触れられたところが全て火を噴きそうになってくる。
なのに、声も出せない。
広瀬は唇を歯で強く噛んだ。くっと身体がこわばったのがわかったのだろう。東城は手をとめる。そして、広瀬の唇に自分の口をよせ、舌で歯をなでた。
舌を口の中に押し入られる。静かな部屋の中で彼の舌が自分の口の中をうごくくちゅくちゅという音だけがはっきりと聞こえる。
広瀬が東城の舌を吸おうとするとそれは避けられた。「それも、だめ」と彼は言った。優しい声なのに、ひどく残酷だった。
キスしながら、東城の手が広瀬の胸に触れた。自分の乳首は東城の手を覚えていて、つぶされたりこねられたりすると、どうしても、身体をそらしてしまう。だが、広瀬が動くと東城は手をとめるのだ。刺激がほしいのなら、広瀬は動いてはならないのだ。
もう、彼の指や舌を感じて我慢することだけで精いっぱいだった。
次に東城がなにをしてくるのか、どこにその指がいくのかを考える余裕もない。東城の手は広瀬の腹をすべり、太ももにおりてくる。口は優しく乳首をくわえて刺激を続けていた。乳首はどちらも尖り、ほのかな快楽を全身に伝えてくる。
太ももからすべった手が、間違えたように広瀬の性器に触れた。
手はすぐに離れた。性器は既に立ち上がり、濡れていた。足のつけ根やわき腹をなでながら、時々、わずかに性器に刺激を与えてきた。
それもわざとなのだとやっと広瀬は気づいた。
「ん」と声があがってしまう。
手がとまった。東城が胸から顔をはなして、広瀬の唇を吸った。
「口寂しい?」と聞いてくる。
そうじゃない、と広瀬は思う。もっと、強くして欲しいのだ。もっと、ちゃんと。
広瀬がどうしたら気持ちよくなり、いくことができるのか東城は知っている。それをしてほしい。性器のくびれを指で回して、先端をくじって。
東城は、また、ゆるい刺激を始める。弱い刺激が続いていくだけなのに、だんだん広瀬は爆発しそうになる。だが、途中でその動きさえも東城はやめた。
彼は広瀬はうつぶせにした。
広瀬は数回大きく息をついた。今度は背中だった。
ゆっくりと、長い時間をかけて首の後ろ、背中、腰、そして、尻に東城の指が舌が動いてくる。
腰だけをわずかにあげされられた。東城の舌が、秘所をなめた。
「あ、」とまた声がポロッおちた。
「我慢して」と東城は落ち着いた声で言った。
とてもセックスしている人間の声ではない。あまりにも冷静な声だ。
唾液をまぶした指が、広瀬の中に入り込んできた。左手の中指だ。押し入るような強さはない。やんわりとなでて、広瀬が自然に開くをの待っている。それはじわじわと入っていた。そして、低刺激を続けながらくるりと中をかきまぜた。
「いやだ!」
自分でも驚くような大声が反射的にあがっていた。身体が前に逃げを打った。東城の指が離れた。だが、触れられもしないのに広瀬はこらえきれず、白濁を散らした。
「ああ」と声が止まらなくなる。
大きな身体に抱き込まれる。彼はもう動くなとも我慢しろとも言わなかった。
腕を身体にまわされると、「やっ!、ああ!」広瀬は悲鳴をとめることができなくなった。
涙がぼろぼろでてくる。意思なんてもうなかった。身体中が繰り返し痙攣し、爆発する。彼に触れられたところから、また、悲鳴があがる。
快感が恐ろしい渦のように巻きついてきた。
東城の腕を避けるためめちゃくちゃに暴れた。東城は今までの冷静さが嘘のように広瀬を力づくで抑えこみ、自分の方にむかせて抱きしめてきた。
そうされて広瀬はまた、いきっぱなしの状態になり、何度も、達した。終わりが見えない。
彼は広瀬がこうなることがわかっていたのだ。いや、こういう状態に追い込もうとしていたのだ。
力では東城をふりほどけないので、背中に爪をたててひっかいた。絶頂が続くことがこんなに苦しいなんて。こんな苦しい目に合わせるなんて。つらくて肩口に噛み付いたような気もする。
だが、最後はどうすることもできず、しがみついて泣きじゃくっていた。「変態」とか「バカ」とか思いつく限りの悪口をあびせた。
最後には「ひどい、こんなこと」とだけ言っていた。それでも、身体の熱と快感は去らず、広瀬は身もだえ続けた。頭の中は自分を支える東城の強い腕のことでだけでいっぱいだった。
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