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2.流されて

「…ったぁ!!ちょっと!いくら師匠でも、これ以上するなら大声だしますけど?」 「おーおー。可愛いねぇー。ちょっと髪の毛も乱れちゃったりして?相変わらず隙だらけなんだよなァ。 いいか、こうやって伸し掛かられると、マウント取られるんだよ。気をつけろよ?油断してると、ヤラれるからな」 「分かったから、いい加減開放してくださいよ!普通に痛いって…!」 「ま、この部屋の空間閉じたから問題ねぇだろ。誰にも聞こえねぇよ」 「はぁっ?魔法の無駄遣いしないでください…っく、ホントに動けないし…」 「押さえつけてんのは俺の自重だけだけどなァ?それにこの空間内で魔法使えねぇし」 レイヴンも力を込めてはいるものの、両腕が取られた状態でテオドールの体重が自分の上半身にかかっているため、 力も入り辛く、両足が虚しく床を蹴るばかりだ。 ひ弱すぎる自分の力に為す術もない。 ジタバタもがくレイヴンを面白そうに眺めていたテオドールの目に獰猛な雄が宿り、 子猫をどう料理してやろうかと舌舐めずりする。 「どうすっかなー?でも、何かヤル気出たし。ちょっと食わせろ」 「な、なんでそうなる……むぐぅっ!?」 レイヴンが言葉を紡ぐ前に、乱暴に口を塞がれる。 酒と煙草の香りが一気に注ぎ込まれ、慣れない吐息に頭がくらくらする。 反撃したいのだが、手も、足も、どうにも動かせない。伸し掛かられた状態は変わらずだ。 顔だけでも背けたいのだが、それすらもテオドールに固定されている。 何度も、繰り返し口付けられ。唇はしっとりと濡れて、呼吸することすら奪われていく。 そのうちにレイヴンの顔にほんのりと色がついてきて、表情が揺らいでしまう。 自由にならない苦しさと、一方的に与えられるキスの応酬に、流されそうになってしまうが、 必死に自分自身を繋ぎ止める。 「…少しはその気になったみてぇだな?」 「…っはぁ。誰、が……」 レイヴンの反応に気を良くしたテオドールが上機嫌に囁く。 少しだけ息を吹き返したレイヴンが、テオドールの唇に噛みついた。 睨みつける目は猫のようで、威嚇しているにも関わらず、呼吸は荒く乱れてきている。 その反応にすら愉しげに。 テオドールはペロリと自身の唇を舐めると、一切開放はせずに、 もう一度同じことを繰り返す。 伸し掛かられているせいで、息継ぎが上手く出来ないレイヴンは。 軽い酸欠状態も加わって、抵抗する力が徐々に抜けていく。 ――――どれくらいキスだけ続けられていたのだろうか? テオドールがレイヴンを開放する頃には、浅い呼吸を何度も繰り返したまま抵抗する気力を奪われていた。 目線の焦点もぼんやりとしているようで、テオドールを見ているのかいないのかすらも分からない。 トロンとした顔を向けているばかりだ。

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