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3.夜の始まり
「やべ。やりすぎた。レイちゃん、おーい?返ってこーい?」
「………」
「もしもーし?生きてるか?」
「………」
「なぁなぁ?そろそろ起きろって……」
テオドールが言いかけたところで、長い息を吐き出して何とか我に返ったレイヴンが
両腕を伸ばしてテオドールを引っ張り込んで抱き込んだ。
まだ呼吸は荒いが、テオドールの耳元でボソボソと息を吹き込むように言葉を紡ぎ出す。
「……師匠が好き勝手してくれるせいで、俺まで変な気分になってきたんですけど。
人のこと煽ったんだから、責任取ってくれますよね?」
「誰に言ってんだよ?っつーか、俺を誘うとは。レイちゃんも成長したんじゃねぇの」
耳朶にキスを落とすと、自分で言っておいて結局照れているレイヴンをグッと抱き起こして、
酔っていたとは思えない足取りでサッサとベッドルームへと運んでいく。
レイヴンをベッドへと放り投げると、テオドールは着ていたローブと服一式を面倒そうに脱ぎ捨てていく。
「……はぁ。何でこんなことになってんだろ……師匠、全然酔ってないし」
色々諦めたレイヴンは大人しくベッドに投げ出されたままの状態で横たわっていたが、
テオドールの鍛えられた上半身を見ると、妙な大人の色気を感じてしまって目を奪われる。
そういう男らしさは、自分とは程遠いものだ。身体は熱が燻っているのに、気分は上がらず憂鬱だ。
そんな気を知ってか知らぬかは分からないが、テオドールはいつも通り軽口を叩く。
「相変わらず軽いし、見た目が良いのはやっぱり得だわ。抱く気になるもんな」
「…っるさいな。今日は誰かさんの処理に付き合ってあげるだけですから。何か成り行きで巻き込まれてるし。
何やってんだろ……俺。はぁ…俺がやっぱり抱かれる役ですよね。知ってた」
切り替えて、同じく嫌味を返したものの。最近誰かと共に朝を迎えた記憶はないので、
少々この展開には戸惑っているのだが。別に減るものじゃないし、と自分に言い聞かせる。
実際には色々とすり減る気はするのだが、正直身体の方が言うことを聞かないところまで追い込まれている。
こんな気分になってしまったのは久しぶりだ。
相手が師匠だということも忘れて、開放してほしいと。そう思ってしまった。
「何だそりゃあ?相手なんて探せばごまんといるだろうによ。抱かれるってお前…自分で言い出したんだから、
責任は取らねぇとな?俺は自分が挿れる以外、ヤル気はねぇからよ」
「別にいいですよ。誰かにヤラれた経験なんてないですけど…記憶の中では」
「まぁた曖昧だな?確かに何も覚えてないうちにヤラれてそうだよなァ?」
「酔ってる俺のこと弄んだくせに、良く言いますよね?最後までしてないからセーフとか思ってました?
俺、今でも根に持ってますからね?文句あります?」
以前、口車に乗せられてテオドールと酒飲み対決をした結果、飲みすぎてしまったレイヴンが、
一度だけ部屋に送り届けられたことがあったのだが。
テオドールが戯れにレイヴンを揶揄って、挿入はナシの行為をしてしまったのだ。
そのことを思い出してしまったレイヴンがテオドールを睨む。
それくらいでは全く動じないテオドールは、そんなこともあったなと笑い飛ばした。
「ハハ!そりゃ上等だ!心配すんなって。今回は同意の上でだろ?ちゃんとヨくしてやるからよ。
この俺のテクニックってヤツでな」
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